日本ではまだ発売になっていないCDを聴いてみた。
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シュトラウス作曲
サロメ、ファイナル・シーン
カプリッチョ、ファイナル・シーン
4つの最後の歌
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ソプラノ、ニーナ・シュテンメ
アントニオ・パッパーノ指揮
コヴェント・ガーデン・オペラ
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録音2006年9月、アビーロード
EMICLASSICS
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国内向けにはレコ芸などに、デカデカとシュテンメの宣伝があるが、この輸入盤には、シュテンメをはじめ、指揮者、オーケストラの紹介は一行もない。
曲のこととリブレットだけ。
まるでイギリス国内のマニア向けのCDのように見える。
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シュテンメは生聴きしたことがあるのかどうか記憶にない。
CDで聴くとよくわからないが、生ではたぶん声が大きいと思う。
ワルトラウト・マイヤーや、昔のシェリル・ミルンズなど、録音からはわかりにくいが、実際生で聴いてみると声がやたらとデカくびっくりすることがある。
地声がデカくて音程が安定している歌い手の場合、聴衆に訴えるものが段違いですぐに納得できてしまうのだ。シュテンメもそのような歌手の一人のような気がする。
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しかし、このCD聴きどころは、パッパーノの棒によるサロメのファイナル・シーン。
シュトラウスの息の長い音楽を弛緩することなく、見事な緊張力で最後の爆発までもっていく手腕はすごい。
調が見えていながらなかなかたどりつかない、少しやきもきさせながら、それでも緊張感が継続し、ついには予定調和にたどり着くシュトラウスの客寄せ的な音楽を見事に振りぬく。
またシュテンメとの呼吸が合っていて、特にフレーズの頂点における音楽の到達点に共通するところがあり聴く方を納得させてくれる。
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4つの最後の歌はどうだろうか。
シュテンメの歌は、一音ずつ、または一フレーズ、念押し的に区切るようなところがあり、音楽がそのつど少し停滞してしまう。
しかし、念押しは音楽を安定させようとする行為であり、どちらをとるかむずかしいところではある。
第3曲における中間部のヴァイオリン・ソロに導かれたシュテンメ、そしてコヴェント・ガーデンの中声域の弦の充実した盛り上がり。実にすばらしいものがある。
終曲第4曲は音楽がもともと滑らかに進行しなくてもいい曲。
停滞しながら終わっていく感じはシュテンメにふさわしいかもしれない。
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ただ、この第4曲ではパッパーノの特質がいま一つでていない。
カプリッチョのファイナル・シーンもそうだ。
もう少し起伏のある音楽のほうが彼には合っているのかもしれない。
それに、月光の音楽はオケがもう少しきちんとやる気を出した方がいい。といっても済んでしまった録音であるから、ここは次回のやる気にかけよう。
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ということで、国内盤は8月8日の発売のようです。
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