2018年12月23日(日) 3pm NHKホール
ベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調op.125 15-14-13-22
ソプラノ、藤谷佳奈枝
メッゾ、加納悦子
テノール、ロバート・ディーン・スミス
バリトン、アルベルト・ドーメン
合唱、東京オペラシンガーズ
マレク・ヤノフスキ 指揮 NHK交響楽団
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年末恒例第九祭り、今日聴くのは三つ目。
2652- 第九、マッシモ・ザネッティ、読響、新国立劇場合唱団、2018.12.20
2653- 第九、クリスティアン・バスケス、東フィル、2018.12.22
聴くほうとしては年末イヴェント的な聴き方は全く無くて、いつも通りのコンサート。色々と指揮者を見れるので楽しみではある。
N響は週月毎に猫の目のように変わる指揮者に合わせるのが大変だと思うが、そういう話は他のオケでも同じなので条件比較するような話では無いのかもしれないが、毎回客演指揮者の指示のもとハイレヴェルの演奏をテンション高く続けていくあたりは、やっぱり、抜きんでたものがある。
三つ目の第九、筋肉質でいてオーソドックスなスタイルを感じさせるN響の演奏は指揮者のことをよく吸収した表現。良く噛み砕いて消化したものと思われる。
初楽章の伴奏風な運命動機はかなりセカセカしている。精一杯の吸収のようだ。駆り立てるヤノフスキ、音の出の遅さを嫌う棒についていくには少し余裕がない。先を見据えていない性急さをプレイヤーに感じる。めいっぱいなのか。理解と表現の乖離を感じさせるもので、まあ、理解の消化はあるということ。
困難な技が続くスケルツォトリオ、前打ちのこちらのほうがずっと良好。ドンドン進んで行く。
本人が肝と言っている緩徐楽章、速めに進む。薄口というか弦のラインや対旋律がくっきりと浮かび、伴奏のウィンド+ホルンのスタッカートが強調されていて、はずむような進行だ。スタイルがスタイルだけにここだけスロウという事も無くて当然の帰結。味わいに時間をかけたい時もある。
終楽章もテンポ緩めず進む。スミスとドーメンが並んで座っているのを見ることは他ではないと思うので、それだけでも僥倖だ。
ドーメンの余裕の歌い口はオペラのものだし、スミスも同じ。両者朝飯前なんだろうがそれでも聴くほうはありがたい。藤谷、加納あわせ4ソリストは秀逸でしたね。
そして、合唱が完全にコントロールされている。まるで器楽楽器のような折り目を入れた克明なフレーム、縁どりが明確な合唱は圧巻。指揮者ヤノフスキのしたいことがここによく表れていました。
ヤノフスキの厳格さが滲み出た演奏。なるほどとあらためて納得。第九堪能。
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帰り際、スタジオパークのほうを回り道して帰ろうとしたら、オーボエの茂木さんがおりまして、あちらにとっては赤の他人なんだろうけど、こちらとしては昔から聴いている。来年の勇退ねぎらい、それから、自分は丸山さんの頃からN響聴いてます、などと立ち話をして、なにはともあれ、長い間ご苦労様でした、と言えて良かった。
はたと、若いときから、N響のお世話になってばかりいたなと一人感慨に更ける。
おわり