2007年3月21日に、ヴァントのSACDのベートーヴェン全集が出た。
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ベートーヴェン/交響曲全部
ギュンター・ヴァント指揮
北ドイツ放送交響楽団
スタジオ録音(1984-1988)
RCA BVCC-37473~7
日本独自企画
初回限定生産
SACD ハイブリッド
CD AUDIO STEREO
DSDマスタリング
¥10,500(5枚組)ボックス入り
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特筆すべきはBMGマスターテープではなく、NDR放送局のマスターテープからのマスタリングであるということ。
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このベト全は、20年ほど前一番最初に出たとき(白地に上方横に赤線がはいったボックス)、その演奏の素晴らしさに耳を奪われた。
しかし、今回のマスターテープから作成したSACDは、
耳から鱗が落ち、
耳が洗われる。
演奏と素晴らしい音質、ともに唖然。
内容は買って聴いてのお楽しみ。
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例によってちょとだけ。
今の時点で1,2,3,4,5番までしか聴いていない。
この全集は入念に作成されたスタジオ・セッション録音であり、瑕疵はない。
エロイカ、運命、ともに全く気張らないものであり、1,2,4番と同様の演奏スタイルに徹底している。
エロイカは、偉大なものは単純である、という誰かさんの名言そのままの演奏も限りなく素晴らしいが、運命の平常心から始まる第1主題、そして最後のコーダまで剛直なまでに果てしもなく続く素晴らしい演奏。
一つ一つの楽器が生きて呼吸をしている様子が手に取るようにわかる。
再現芸術というよりも、今まさに創造されているような錯覚に陥る。
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このボックスには、97ページに及ぶ解説がついている。日本独自企画なので日本語。
いろいろな人の文が載っている。
船木篤也さん
ヴォルフガンク・ザイフェルトさん
喜多尾道冬さん(1989年の再掲)
平野昭さん(1989年の再掲)
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さらに、資料編ということで、
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ヴァント/NDR so.の演奏記録
1992年インタビューの全訳
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さらに、
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プロダクション・ノート
(当録音の経緯)
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もちろん、曲目紹介、演奏者紹介、もある。
録音データがすごい。
初出の時の録音データの修正まで全てのっている。
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いろいろとすごい解説だが、なかでも、
船木篤也さんの文章が熱い。
特にエロイカを振る時の姿の描写が熱い。
ヴァントは、一小節分きっちり空振りしてから第一小節の打撃音にはいる。
ヴァントの指揮をみればその熱い思いが伝わってくる。
この前、1990年の来日公演のことを書いたのでそちらもよろしければ読んでください。
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ということで、何度聴いてもしばらくは飽きのこない完全に素晴らしい演奏だ。
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ところで、なんで、たなざらし番外編、なのか。
それは、一言でいうと価格。
5枚で1万円というのは今の投げ売り消費社会には全く馴染まない。
いくらSACDとはいっても、ある程度まとまりボックスになると少しは安くなるものだが、今回のブツは、ピクリともせず強気の価格。
へたをすると、たなざらしの可能性を否定できない。
おわり
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