河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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621‐ 2万パーセント・バレンボイム エッティンガー ファウスト交響曲 2008.6.13

2008-06-15 19:00:44 | 音楽

 





1983-1984シーズンの演奏会通いの模様を書きはじめたところでしたが、ちょっと中断して、先週の演奏会の模様からひとつ。

2008年6月13日(金) 7:00pm サントリーホール

ワーグナー タンホイザー序曲
シューベルト(リスト編) さすらい人幻想曲
 ピアノ、小川典子
(アンコール)リスト/カンパネルラ

Int

リスト/ファウスト交響曲
テノール、成田勝美
 新国立劇場合唱団

ダン・エッティンガー 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団


長いコンサートだった。
バレンボイムの棒は、ピットのときは棒は見えないがそれもいれて、とにかく山のように観ている。
エッティンガーの振り姿は2万パーセント、バレンボイムそっくりだ。モノマネを越えた異常なほどのうり二つ。いくらバレンボイムの助手とはいえここまでそっくりになってしまったのも珍しい。ゴルフの尾崎そっくりになってしまった丸山どころの比でない。
右手左手右足左足しぐさアクション、要するに体全部がバレンボイムそのものだ。
バレンボイムの影響力の凄さもさることながら、日本人でもないのにこんなに真似しちゃっていいのかな。

それでは演奏の中身はどうかというと、ワーグナーがタンホイザー序曲だけでは具合は分からないが、今日のメイン、リストのファウスト交響曲を聴く限り、4万パーセント・バレンボイムだ。何がそっくりかというと、劇的なものをものの見事に表現するあたり。
後ろ姿と演奏はそこにバレンボイムがいる。

リストのファウスト交響曲を生で観聴き出来る機会はめったにない。
やっぱり行くしかない。
タイミングはこんな感じ。(実測)
.
第1楽章ファウスト 33分
第2楽章グレートヒェン 20分
第3楽章メフィヅトフェーレス 17分
終結部 神秘の合唱 7分

ポーズもいれて約80分の大曲となってしまった。
楽章が進むにつれてかかる時間は短くなり、音楽の充実度は逆に高まっていく。だから音楽はいらないところもいるところも、うまく補てんされているわけだ。
第2楽章が少し弱い気もするが、リスト特有のドライなロマンティシズムがそれなりに味わい深い。
第3楽章の駆り立てる表現、終結部の大きなふちどりにもっていくあたり、バレンボイムの陶酔のトラップにはまったエッティンガーの真骨頂なのだろう。これはこれで大変にエキサイティングにして劇的、見事な表現であった。

曲の解説は解説者に任せるとして、それにしても第1楽章の無調的、12音的進行はそれまでのリスト(のことなんて知らないが)とはだいぶ様相が異なる。音階の進行は面白いが、ソナタ形式のほうは耳が探しているあいだに終わってしまう。こっちは面白くない、というわけではないので、だから第1楽章が30分以上かかっているのにそんなに長い気がしない。
なじみやすいがゴツゴツした不器用な主題であり、お世辞にも流麗とは言い難い音楽が続くが、ここらへん聴きこむしかない。第1楽章が終わったとたんに10名ほどの聴衆が退場した。わけがわからなかったのだろう。標題音楽ならば、その模様をステージ右左に字幕として映し出すといった荒技も必要なのかもしれない。
第2楽章はリスト特有のウェットではない乾いた音楽表現となっているあたり、馴染めないというか感情移入が出来ないというか、そのせいだけでもないと思うが、少し長く感じる。エッティンガーのほうは逆にかなり込めた音楽を作っている。聴衆に理解を促すこういった姿勢は指揮者にはとても大切なことだとあらためて実感。音楽のまとめは次の楽章を予感させる見事なものだ。
第3楽章は必要以上の盛り上がりというか、第2楽章もそうだが、結局、第1楽章の展開であり、主題が1個しかないような状況下で、急きたてるように盛り上げていかなければならないのもつらいところではある。この楽章の盛り上がりは異常であり加速する音楽、オーケストラはかなり乱れたものの、音楽表現としては正解。この加熱する音楽がフィナーレでないことは、テノールと合唱がまだ声を発していないからわかるだけではなく、安定、調和がいまだ解決していないと自然に感じることができる。のでわかるというものだ。
終結部になってはじめて、第2楽章が終わったポーズのところで入場してきたテノールの成田さん、新国立劇場の男声合唱団20人ほどの声を聴くことができる。
テノールのソロはかなりのハイトーン連発。ちょっとひっくり返り気味のところもあったが彼でなければファルセットで歌われてもしょうがないのではないか。2月に行われたワルキューレの熱演を思い出す。
男声合唱はエッティンガーの解釈についていっていない。
それやこれやであったが、吹き上げるような大団円を見事に作り、明確な構成感を鳴りきった音楽で示した演奏であった。聴衆のブラボーコールはいつもどおり早すぎて余韻を楽しむ空白がなかったのが非常に残念。日本人の悪い癖はいつでもどこにでも顔を出す。

前半のさすらい人幻想曲は例の無骨な節まわしがリストっぽい。本日のプログラムビルディング、ストーリー性という点では、全体の流れをとらえたいい選曲。
表面づらへこびない小川さんの演奏態度には好感がもてる。硬さではなく真摯さが演奏表現にあらわれる。
通路を隔てた隣に座っていたおじさんが小川さんが出てくるなり曲が終わるまで固まっており、演奏後かなり叫んでいたがそうとうなファンなのだろう。
アンコール・ピースが絶品で、コンツェルトよりもこちらのソロのほうがうったえかける力、表現の幅がより明確。リサイタルで思いっきり力が出る実力派。聴衆が喜ぶのも無理はない。思わぬアンコールであった。

最初の曲のワーグナーでエッティンガーのワーグナー実力を確かめることはできないが、既に日本も含めかなりオペラ公演を積んでいるので、余裕の選曲なのだろう。縦の線よりも全体の流れにポイントを置いた劇場型の棒だ。
この最初のワーグナーから、さすらい人、アンコール、休憩、ファウスト交響曲まで、3時間に迫ろうという演奏会。最近では珍しい。
ファウスト交響曲だけで一晩もたせてもおかしくない時代ではあるが、たまにこのような長丁場もいい。
なによりも指揮者が長いのを苦にしていないのが見てとれるし、手ごたえ十分の演奏会であった。
おわり

 

 


2 コメント

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河童メソッド様 こんにちは (黒鍵)
2009-01-27 15:57:48
河童メソッド様 こんにちは
この演奏会でもニアミスをしていましたか!
本当に長時間の演奏会でしたね。オペラならいざ知らず。
それにしても、河童メソッドさんの専門的解説は、どれもこれも驚かされます。多くの演奏会経験と文献研究から来ているのでしょうけれど・・・
読むたびに、ため息と共に「一体、自分は何をしに演奏会に行っているのだろうか?」と、何だか訳の分らない葛藤をしています。あ-あ-あ-
コメントありがとうございました。 (河童メソッド)
2009-01-28 00:21:03
コメントありがとうございました。
黒鍵さものところへは、pilgrimさまのところからうかがいました。
歌はpilgrimさんにお任せですね。
また、お気に入りブログにいれていただきましてありがとうございました。
昔の演奏会のことを書くのは楽しいですね。
昔の演奏会日付、プログラム、レビューなどいちいち残っておりますので。(自称記録魔?)
今後ともよろしくおねがいします。

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