2015年6月11日(木) 7:00pm サントリー
プロコフィエフ ピアノ協奏曲第3番ハ長調 10′9′8′
ピアノ、デニス・マツーエフ
(encore)
リャードフ 音楽の玉手箱 3′
ビリー・ストレイホーン(マツーエフ編曲) A列車で行こう 4′
Int
ショスタコーヴィ 交響曲第10番ホ短調 25′5′12′12′
(encore)
エルガー 謎よりニムロード 3′
ユーリ・テミルカーノフ 指揮 読売日本交響楽団
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今年はプロコフィエフの3番コンチェルトを聴く機会が多い。この日はマツーエフの爆なピアノ。とにかく、全部が平易な作業に見えてくる。
ピアノを弾いているという感じではなくて、腕や手や指を鍵盤におけばそれがすべて正しい位置であるという妙な結果論的な話があらかじめ用意されていると思えるような演奏で、神がかり的と言えるかもしれない。
線は思いの外太くなく、ボテボテと不明瞭な響きは皆無、ボリボリと強弱を掘り起こすような雰囲気皆無、一人で何本もの線を同時に操っているように聴こえてくる。あちらが見えるようなジャングルジム的3番コンチェルト、レアな透明度でした。
アンコールも印象的。
1曲目の玉手箱はなんだかミニチュアのオルゴールをいじっているような感じで、いつの間にかそのピュアな響きに聴衆が耳をたてている。
2曲目のA列車では演奏後、自分の両腕の指を見て、オレの指どうなってんの、って。そんなしぐさ。
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後半のショスタコーヴィッチは言葉のもつ良否の印象は横に置いて、ゆるい、締めない、余裕がある、音がつながっている、響きに膨らみがあり、空洞のような感触がある。
ダダッ、ダダッ、二つ目のダが空気がすぅと抜けるようなリラックスした味わいの響き。後打ちが自然で妙な強調を感じない。手綱を緩めた柔らかいシンコペーション。
この曲は第2楽章や終楽章のスネアドラムの鳴りはあるが、パーカッションの例えば音色旋律風な粗野で魅力的な進行と言ったものがあまりない曲で、弦の透明な響きとリズムが統一感を持って楽章をまたいでくる。分散していく弦の息が長くて美しいメロディーライン。聴くほどに味わいが出てくるものですね。年初に聴いたワシリー・ペトレンコ&リヴァプールの硬質ででかい馬力のサウンドとはだいぶ違いますね。
ギスギスしない演奏で、油が十分に塗られているのにつるつるすることなくスムーズに進んでいく、漕ぎ具合のいいチェーンの自転車そんな感じです。
あと、全体の構成感、バランスが非常に良い。長大な第1楽章はテミルカーノフの棒のもとさらに長大になったけれど、内容の噛み砕きが素晴らしくて飽きない。構造のバランスがいいです。このテンポで隙間が無いというのは凄い話ですね。
あわせたように、短い第2楽章も悠揚であり混乱しないオーケストラサウンド、いいうねりです。第3楽章は2楽章の連鎖になるわけですけれども、第1楽章のゆっくりしたテンポの陥せいにはまっていかない。第3楽章とほぼアタッカではいる第4楽章は同じ長さで、足すと第1楽章になる。ショスタコーヴィッチの3楽章的構成感の対比の妙をここでも感じないわけにはいかない。モードは全曲にわたり緊密ですしね。
アンコールのニムロード、お得意の曲ですね。このピースを振る時のテミルカーノフの顔はなぜか若々しい。いいですね。
この演奏でも構成感への配慮が大きいて凄い。あのスローさでピース後半にウエイトを置いてさらに突き詰めていくあたり、まぁ普通ではない凄さでした。
いい演奏会でした、ありがとうございました。
おわり