河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2348- モツコン6、小曽根真、ブルックナー5番、ノット、東響、2017.5.20

2017-05-20 23:24:46 | コンサート

2017年5月20日(土) 6:00-8:25pm シンフォニーホール、ミューザ川崎

モーツァルト ピアノ協奏曲第6番変ロ長調  7-6-13′
  ピアノ、小曽根真
(encore)
E.レクオーナ スペイン組曲「アンダルシア」から第4曲ヒタネリアス 2′

Int

ブルックナー 交響曲第5番変ロ長調   22-21-13-24

ジョナサン・ノット 指揮 東京交響楽団

小曽根さんのモーツァルト、端正な表現でいい感じでした。伴奏オケに溶け込んだ音色でよくブレンドしていて、ピアノインストゥルメントのピアノ色のみがよく浮き出てくる。きれいな色合いのコンチェルト。
パッセージの回転が速いところでも均整のとれたぶれない演奏、それにカデンツァも楽しめた。もう一つの商売道具は仕舞って、モーツァルトに徹していましたね。NYPと共演した時のような妙な多発サムアップもなくてご挨拶も割と端正。
小編成の東響オケ伴、そのわりには音がデカく感じるのはピッチが限りなく合っているからでしょう。アンサンブルもいいですし、ピアノも気持ち良く弾けたと思う。モツ6味出ました。
終楽章が通常の倍ほどかかったと思いましたが気のせいですかね。


AB5
Ⅰ i3-2-3-3-5-1-2-1-c2
Ⅱ 3-4-3-5-5-c1
Ⅲ 6-2-5
Ⅳ i2-1-3-3-6-1-3-3-c2

後半のブルックナー。
アダージョ楽章の2回目の主題Bあたりからノットフレーヴァーが効き始めて、クライマックスを含む3回目の主題Aのあたりで止まりそうになる。極度な傾斜。昨年2016年のコスモプロ、リゲティの無律動なアトモスフェール、カオスであってもピュアな東響サウンドを思い出した。ブルックナーのほうはもともときれいな音ですけれども、これら滑らかな傾斜具合、東響、そして明らかにノットのもの。
アダージョ楽章のコーダは短いものですから取った手段なのかもしれないと思うところがありますが、いずれにしても、構造越えのノットの解釈はよく理解できます。感性と造形がよくバランスしている。
この楽章、本日の白眉でした。結果的には前日のロジェヴェンを越えるロングな楽章となりました。

それから、もうひとつ。
フィナーレ楽章コーダ結末の5個の打撃音の前の強い2回の下降パッセージ。この2回目の部分ですね。これでもかというぐらいの驚天動地の圧力。あの音圧にぶっ飛びました。たまげた。
あすこのところ、オーケストラ楽器能力の限界強度の吹き弾きではなかったのか!驚いた!そして感情の糸を止めず一気にエンディングまで持って行った。カオスと言えばここが唯一のカオスだったのかもしれない。見事なフィニッシュでした。
東響の音響美はパーフェクトでした。ブルックナーも草葉の蓋が開くぐらい喜んだに違いない。

慎重にして入念な冒頭の導入部、そして提示部第1主題が決然と現れる。東響独特の明るいサウンド、解像度が高く力感溢れる。それに、オーケストラの奥行き感が凄い。楽器の強弱のその前に既にオーケストラという楽器が独自のパースペクティヴを保有している。これが、能力のひとつとして一気に開花する。素晴らしい。ハードなこの主題、そしてソフトな第2主題、ピッツィカートはクリア、歌は明るくしなやかに、いいですね。第3主題はややスロー目ながら流れる音楽が心地よい。
展開部はオケにちょっとキズが見えましたけれども他楽器まで波及することはなくて、気持ちの落ちつきは良く表現されていたと思います。明るく落ち着く。
圧縮された再現部、コーダは濃く。造形バランスがとてもいい。輝く5番、下降音型がくい打ちのように打ち込まれる第1楽章ながら音楽はどこまでも上昇していく。見事なノット棒。

アダージョはノット、最初に書いたように本日、白眉のベスト表現。演奏のスローな傾斜は空気のゆがみさえ感じさせるもので、結果、演奏のほうがストレートに聴こえてしまうという位相の鮮やかな扱いと言えよう。

スケルツォは2回目のほうが一段と力感がありスピードもアップ、ただの繰り返しにはなっていない。最終楽章を見据えた表現といえる。ノットの造形感というのはこうゆうふうに前後色々と俯瞰してみるとよく理解できる。

フィナーレ楽章は提示部と再現部が同じ規模、再現部のほうは音圧が強烈に増していって主題の切り替わりのポイントがわからないぐらいになるところもあるけれども、構造を見る醍醐味的手応えがあると言えばある。感情の盛り上がりはノットが示してくれているけれども、もしかして冷静に計算されつくしたものかもしれないとルツボテンションのなか、ふと思う。
第1楽章の展開部の滑らかな滑り具合と自然な伸縮、それはこの楽章の展開部では折り重なるような重力音場となる。見事な対比。この流動性と力感の二つの位相がそれぞれのコーダを決めている。だから最初に書いたようにフィニッシュコーダの圧倒的強度の音圧がここで具現化される。上下前後左右出し入れのあや、見事に計算されていると思います。
ダークブルーな5番に明るくスポットライトをあてたノット、東響の演奏は緻密でビューティフルなブルックナーで、存分に楽しむことが出来ました。
おわり



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