河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2717- キャリック、ライヒ、カーター、リチャーズ、ロックウッド、ホブタ、クラム、第5回 両国アートフェスティバル2019、アメリカに見る創造精神、2019.8.4

2019-08-04 23:13:14 | 室内楽

2019年8月4日(日) 7pm 両国門天ホール

リチャード・キャリック 《音の手触り》2台ピアノのための(2015)世界初演 7
  ピアノ、井上郷子、篠田昌伸

スティーブ・ライヒ 《ピアノ・フェイズ》(1967)  10
  ピアノ、篠田昌伸、榑谷静香

エリオット・カーター 《ピアノについての2つの考察》より II. カテナリー(2006)  2
  ピアノ、榑谷静香

エリック・リチャーズ 《フィールドの解明》(1988)  5
  ピアノ、井上郷子

Int

アニア・ロックウッド 《RCSC》(2001)  3
  ピアノ、井上郷子

エレノア・ホブダ 《スプリング・ミュージック・ウィズ・ウィンド》(1973)  10
  ピアノ、井上郷子

ジョージ・クラム 《時代精神》2台の増幅されたピアノのための6つのタブロー(1989)
         7-4-5-4-3-5
  ピアノ、篠田昌伸、榑谷静香



第5回 両国アートフェスティバル2019〜芸術監督:内藤明美 7/28/日〜8/5月


8/4と8/5の両日は、演奏会タイトルとして、
コンサート「アメリカに見る創造精神」
芸術監督内藤明美氏の視点から、30年近く暮らすアメリカにおける独創的なピアノ作品を紹介します。
とある。
プログラム冊子はコンパクトながら、資料的価値も高い。このようなときに、特に現音系で、いつも思うのは、開場して30分で作品紹介資料を読むのは大変、あとで読むのもいいが、ここに並んだ7人の作曲家のピアノピースの事はまるで知らないし、どうしてもあらかじめ読んでおきたい。まして、一旦、音になって消えてしまったら、音源が簡単に手に入るかどうかもわからないし、どうしても始まる前にじっくりと読んでおきたい。というわがままな願望が先に立つということ。

現音系のレア作品や初演ものは特に、身を粉にして観て聴いてできる限り記憶の中に押し込める。まず、その努力が必要だ。冊子はとりあえずかじり読みし、あとでじっくりと読むときに音がよみがえってくれれば自分の脳みそに感謝だ。まあ、これはこれで楽しみといえるかもしれない。


アメリカの作曲家7名というプログラミングは壮観です。ざっくり、前半が通常のピアノ作品、後半はプリペアードっぽくなる。


キャリック
世界初演となっているが、今回のオリジナルなピアノ・デュオでは世界初演。ソロピアノなどで既に演奏されているようですね。
ドビュッシーの遊戯が下敷きにあるようですが、響きというよりもイメージの拡大ですかね。遊戯よりも短く切った音、それが水滴のように広がっていく。後付けではないなあと実感できるものだ。


ライヒ
ライヒ初期の作品。フェイズ・シフティングによるミニマル・ミュージック。2台のピアノの進行が少しずつずれを起こしていく。同一波長で片方の速度を上げていくとこうなるのか。音響・響きが焦点ですね。と言いたいところだが、造形も練られていて12音での繰り返し進行から8音列へ、最終的に4音リピートへと帰結する。一度聴いて容易にわかるものではない。10分のタイミングはこれ以上長くも短くもできないだろうな、というエキスのみの世界ですね。考えぬかれた作品に聴こえる。ずれが、3つ目の音を生んでいるようにも思えるのだが。
終わる少し前のところで地震があって、それでもポンポコリン状態が佳境に入っていて、とにかくそのまま進行。


カーター
晩年多作型の作曲家で作品カタログのうちの半分が80歳を越えてから。このカテナリー懸垂線は97歳の時のもの。和音がない。単音の連鎖ですね。このアイデアは作者のみぞ知るだろうが、エネルギッシュな97歳が見えてくる。速いパッセージが強烈印象、あっという間の2分。
2つの考察とあるからもうひとつピースがある。ぜひやってほしかったですね。


リチャーズ
聴いてる限り、タター、タター、といった単音の連打。連続する単音、ここから何を想像していけばいいのだろうかとは思うのだが。
タイトルのthe unravelling of the fieldはアメリカの詩人ダンカンの詩集the opening of the fieldをもじったものという。ダンカンの死を知ってインスパイアされたもののようですね。
譜面は4枚で綴じられていない。どこから始めてもよい。同一ページを繰り返してもよい。自由ですね。


以上、前半4曲終了。休憩があって後半はピアノで色々なことを始める。


ロックウッド
ピアノの内部奏法が顕著。ピアノ線を叩く、弾く、擦る。といった世界がでかい譜面1枚に綴られている。もはや、過激な世界とは思えない慣れっこな日常となってはいても、あらためてこうやって至近距離で見ていると、思考と苦難がしのばれるものだ。
RCSCというタイトルはあまり思慮が感じられず、タイトル、めんどうくさいわ、の雰囲気すらある。ピアニストのサラ・ケイ(SC)が、女性作曲家ルース・クロフォード・シガー(RC)へ敬意を表して、女性の作曲家たちに委嘱した7つの小品のうちの一つ。でも、もう少しましなタイトルつけてもよかった気もするが。


ホブタ
鍵盤の蓋は閉じられたまま開くことはない。多種のマレットとマレットモドキと呼んでいいかどうかわからないが、とにかく、見て感じる作品のようだ。
スーパーボール・マレットのちのフリクション・マレットを紹介したアルシデス・ランツァのために書かれている。グランドピアノの内部全体を7つの部分に分けている。このイメージがポイントかもしれない。
ダンパーペダルは踏み続けたまま。スーパーボール3種とゴムバンドを巻いたもの2種と同じくゴムバンドを折って縛ったもの1種。0.5リットルの酒ボトルに水を満たしたもの1種。これで計7種。加えて、プレイヤーの呼吸音、口笛、ハミングも。
これで大体イメージ湧きますよね。見るに限るといったところです。どうやったこういった発想になるのか脳みそを見てみたい気もするが、このプレイ行動じたいが脳みそなのかもしれない。


クラム

Ⅰ前兆portent
Ⅱ2人の道化師two harlequins
Ⅲ一弦器monochord
Ⅳ彗星の日day of the comet
Ⅴモルフェウスの王国the realm of morpheus
Ⅵ反響reverberations

この日最後の作品はクラムで30分に及ぶ規模の大きなもの。クラムの作品はつかみどころのなさもあることはあるが、一つの作品を丹念に聴いていくと、その努力が報われる快感のようなものが走るから手ごたえ感がよいわけですね。
タイトルにある、増幅された、というのはアンプリファイということですから大体イメージは湧く。それを現実のものとする。こういう機会はめったにない。
なぜ総タイトルがドイツ語なのかは固有名詞だからですね。ツァイトガイスト。6つの絵画の副題もzeitgeistを知る方にとっては何でもないことなのかもしれないが、全くわからないので手の施しようがない。副題と実音のイメージをひたすら結び付けて聴くのが関の山です。
そういったことはあるものの、聴いているとやっぱり充実感に浸ることは出来る。副題と曲想のイメージをたどりつつ、それらがよく一致しているなあと。聴き進むと、もはや、言葉の意味合いそのものの音ではないかという思いに至る。Ⅰの前兆がこのなかではトップの充実度。最初が肝心。いきなり全開して、そのあとの絵も勢いにまかせることのない見事な作品と思いました。良かったですね。まあ、これを聴きたかったのだ今日は。


以上、全7作品。堪能しました。ありがとうございました。
おわり



























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