前回ブログではジョン・アダムスの日本初演ものフラワリング・ツリーのことを書いたが、今日はストラヴィンスキーのエディプス王。
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2008年12月7日(日)3:00pm
NHKホール
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ストラヴィンスキー/
バレエ音楽「ミューズの神を率いるアポロ」
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ストラヴィンスキー/
オペラ・オラトリオ「エディプス王」
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エディプス王:ポール・グローヴズ
ヨカスタ:ペトラ・ラング
クレオン、伝令:ロベルト・ギェルラフ
ティレシアス:デイヴィッド・ウィルソン・ジョンソン
羊飼い:大槻孝志
語り:平幹二郎
東京混声合唱団
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シャルル・デュトワ 指揮
NHK交響楽団
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エディプス王は昔メトで観たことがある。715-
このときは、オケピットにオケがはいるのはいつもどおりだが、合唱がステージ前方、その後方の台の上で歌や演技が行われた。音楽のことは忘れかかっている。
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今日の演奏会はいたって通常のもので、オペラというよりもオラトリオという側面が強い。
オーケストラの前方にソリストと語り、奥に合唱。
メトだと例えばヘンデルのオラトリオ「サムソン」もオペラにしてしまう。素晴らしい舞台のことがよみがえるが、今日のところはコンサート・スタイルでオラトリオを楽しむ感じ。
音楽の荒々しさはオルフのカルミナ・ブラーナを想起させる。
カルミナ・ブラーナはエディプス王よりも後の作品のはずだが、なんだか順序が逆でも自然な流れ。
エディプス王も粗野で凶暴な部分があるが、カルミナ・ブラーナよりはスマートな感じだ。
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平幹二郎の劇的でわかりやすい口調の語りでまずこれからのストーリー展開を説明する。そうすると続けざまに音楽がその内容の劇を繰り返す。
そうやって同じようなことをリピートする。非常にユニークでわかりやすい。左右にある字幕の効果ははかりしれない。平幹二郎の語りのときは字幕は出ない。聴衆は日本人であるという前提だ。
昔メトで観たときは字幕も何もない。語りもない。だから、聴衆がアメリカ人だろうがロシア人だろうがイタリア人だろうがフランス人だろうがイギリス人だろうが関係ない。ただなんとなくわかる感じ。。
重いストーリーであるが、平の語りは圧倒的で今にもバリトンで歌ってしまいそうな感じ。内容にあった深刻な語り口でいいものであった。
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エディプス王以外のソリストは歌う部分がかなり少ない。特に第2幕のヨカスタであるが、どこで死んでしまったのかよくわからない。いつの間にか死んでしまった?ヨカスタはほんのちょっとだけ活躍するだけであまりに出番が少ない。
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デュトワの棒はストラヴィンスキーの荒々しさをうまく表現していた。特にブラスの咆哮は素晴らしく、圧巻。合唱も楽器の一部のような表現でうまく溶け合っていたと思う。骨太の大アンサンブルが展開された。
またウィンドが良く、というかN響のウィンド・アンサンブルは世界中のオーケストラの中でも屈指のものだと思う。昔からそうだ。。
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前半のアポロは弦のみの曲。
しなやかさとリズムの鋭さの両方が必要である。リズムが甘く特に中低弦が少しまどろっこしい。高弦の美しさはさすがであるが、後半の曲のウィンドの美しさにはかなわない。
アポロは、ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルの透徹した響きにかなう演奏はもうでてこないだろう。
おわり
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