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2010-2011シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちら
この日はヴェルディのレクイエムを聴きました。
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2010年9月10日(金)7:15pm
すみだトリフォニー
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ヴェルディ レクイエム
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ソプラノ、ノルマ・ファンティーニ
メゾ、マリナ・プルデンスカヤ
テノール、スコット・マクアリスター
バスバリトン、ラルフ・ルーカス
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合唱、栗友会合唱団
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指揮、クリスティアン・アルミンク
新日本フィルハーモニー交響楽団
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4人の個性は四方八方に強いものだが、アンサンブルになると絶妙さも発揮、ヴェルディのドラマチックなオペラのるつぼ状態になる。自信の塊のような発声が美しいイタリア・オペラ歌手ファンティーニ、ややナーバスながら併せ持つ繊細さが素晴らしいプルデンスカヤ、押し切るマクアリスター、誠実なルーカス。4人とも見事な歌でした。
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メゾのプルデンスカヤは、あの細いウエストのどこからあのように太くて見事な声が出てくるのか、まるでアルトのように響く個所もあり、とにかくホールに響き渡る。最初の独唱となるからなのか、近くで見ていると非常に神経を使っている様子が手に取るようにわかる。合唱に合わせて口を合わせながら発声しているのだろうか。入りの前から集中度がものすごい。このような美人にして研鑽が並みでない。クラシック音楽のデリケートさをあらためて感じさせてくれた。見事なレクイエムでした。
ソプラノのファンティーニは天性というか職人というか、そのように見えるけれども、オペラの主役のような気のこめ方は尋常ではないし、言葉の端々への気配りが美しく、このレクイエムの詩の意味をあらためて教えてくれる。特にリベラメで怒りの日が回帰して終わる個所のしめくくりは秀逸でした。
テノールのマクアリスターはワーグナー歌手のようだがイタリアものも歌うようだ。ジークフリートも歌っているのでエネルギーが無尽蔵なのだろう。それよりもなによりもやや細めのテノールながら、一つ一つを決めながら進んでいく様はこれまた天性のものを感じさせる。
バスバリトンのルーカスはバイロイト生まれ。ヴォータン役でデビューとある。ワーグナーの歌い手。非常に手堅く正確さを強調した歌いぶりは好感度が高い。
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個性の強いソリストがそろったが、4重唱から2重唱までアンサンブルが絶妙でこればかりは日本に集結してからのあきらかな努力の成果であり、そのオペラチックなアンサンブルに魅了された。とくにソプラノとメゾの2重唱の響きは絶妙というしかない。この日はこの4人の歌を聴けただけでも大満足でした。
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合唱は透明。強弱の色合いがよくでており奥行き感がある。合唱はソロパートがないわけで、聴衆のまじめな聴きぶりがご当人たちの緊張度を高めてくれているのではないかと思える人たちも何人かいないわけではなかったが、総じて良い歌でした。
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オーケストラはあと一歩切れ味が増せば何も言うことがない。今回このホールが結構デッドな響きであるということを認識した。響きの音をオーケストラの実音がフォローしているようなところがあり、これはこのホールをホームにしているからこそ可能な音の出しかただ。
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第2曲怒りの日はバンダ4本付き。約38分の長丁場。終えた瞬間に歌の方の4人のソリストはペットボトル状態。7曲中異常に膨らんだ第2曲であるけれど、見事な構成感とそれぞれの声をバランスよく出番にするヴェルディのうまさはなんとも言えず充実した音楽を味わうことが出来る。
第7曲のリベラメでの怒りの日が再帰して、ブラスの強烈な全奏に後押しされた絶叫のフルサウンドにからむソプラノのファンティーニの見事なエンディングはまさにオペラそのもの。劇的なものから静寂へ。
それとこの個所ですが例えばムーティが指揮をするととんでもない超高速で突き進みます。調が予定調和して終わる個所ですので音楽的なポイントになる部分でもあり、ここの扱いは興味が湧くところでもある。オーケストラの性能にかかわらず、ここは完全に指揮者の解釈の違いがでるところ。アルミンクは横広がりとでも言いますか、わりと余裕を持った音楽造り。他にも全般に余裕を持った動きとなる個所が多い。微にいり細にいるというよりも、ppを丁寧に表現しているようだ。
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久しぶりにきいたヴェルレクでしたが、4人のソリストには非常に満足した一夜でした。
おわり