2018年12月10日(月) 7pm サントリー
メンデルスゾーン 序曲 フィンガルの洞窟 op.26 10
シューマン 交響曲第1番変ロ長調 op.38 春 11-6+6+9
Int
ストラヴィンスキー 春の祭典 15-18
アラン・ギルバート 指揮 東京都交響楽団
●
シューマンは生はありそうで、そうでもない。鳴らし切る演奏は日本のオケではあまりお目にかからない。序奏のファンファーレをこぢんまりとやってしまう傾向が強く、その流れで進んでしまうのが多い。
一か月半前に聴いたティーレマンは不発の部類だったと思うが、その演奏とはそもそも方針が違うようなアランの棒はなかなかのものだった。オーベー系のうちべー系に近いものでしたなあ、あえて言うならば。
2630- シューマン1番、2番、クリスティアン・ティーレマン、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団、2018.10.31
大胆な響きが要る。大きく構えて、ファンファーレモードで最後まで突き進む。アランの春は概ねその方針。ただ、その騒ぎを押しとどめる抑制配慮も。聴き進めるうちに、最初のフィンガルで感じたことがもっと如実にフレーヴァーされたテイストで、ふむふむなるほどと。
ディテールの味付けが濃い。余裕を持った濃さで輪郭を縁取る。細部に光をあてている様子がよくわかるもの。それとブレンド合奏時のブラスセクションのバランスに最大配慮。この鉄板に壁ドンのブラスオケを丁寧にコントロール制御。
つまり、大胆な響きときめの細やかさが同居。作品の彫りの深さを垣間見せてくれた。それが原因なのか、求めていないのか、その割に、流れが出て来ない。やっぱり、この秀逸なパースペクティヴ感に欲しいのはシューマンの刻み節進行で魅せるリズミックな前進する流れと躍動感。結構なスピード感で入念な彫り込みをしているわりには流れない。エネルギッシュなキシキシする弦のきしみのような鳴りを聴きたい。
いずれにしても、アランの棒には確実に余裕というか、色々なものを見渡せるようになった一段上の力を感じさせる演奏でした。ニューヨーク・フィルを経て得たものは大きい。
後半プロのハルサイはシューマンの印象をそれぞれもっと濃くしたような話で。
2部より1部のパワーが上回ると普段は感じるハルサイ。今日のアランの棒では1部2部同等。2部冒頭のロングな細部ディテールの練り込み、魅惑的な響きを加味すると2部の聴きごたえ感が大きい、終場に向かう盛り上がりはなかなかのもの。これに勢いがもっとあればさらにテンションも上がっていたと思う。スピード感がある割に流れが出ない。繰り返しの話だが。
8ホルンの咆哮は妥当なもの。むしろミュート有り無しを問わず、相応なコントロール鳴りに制御していたトランペット、トロンボーン等のいつになく五月蠅くないプレイに引き込まれた。これに弦の地鳴りが有れば、驚天動地のハルサイになっていたことだろう。
アランがこのオケの音楽監督になってじっくりと音楽づくりをしていったら硬いオケを変えられそうな気がする。
おわり