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2013-2014シーズン観たオペラ聴いたコンサートはこちらから
2013-2014シーズン
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ジルベール・デフロ、プレゼンツ
マスカーニ作曲
レオンカヴァッロ作曲
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美術・衣装、ウィリアム・オルランディ
照明、ロベルト・ヴェントゥーリ
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ニュー・プロダクション、プレミエ・ナイト
カヴァレリア・ルスティカーナ
パリアッチ
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2014年5月14日(水)7:00-10:00pm 新国立劇場、初台
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マスカーニ カヴァレリア・ルスティカーナ
シーン:53′ 間奏:5′ シーン:15′
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キャスト(in order of appearance)
サントゥッツァ、ルクレシア・ガルシア
トゥリッドゥ、ヴァルテル・フラッカーロ
ルチア、森山京子
アルフィオ、成田博之
ローラ、谷口睦美
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Intermission 25′
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レオンカヴァッロ パリアッチ
前口上7′ シーン42′ 間奏3′ シーン20′
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キャスト(in order of appearance)
トニオ(タッデオ)、ヴィットリオ・ヴィテッリ
カニオ(パリアッチョ)、グスターヴォ・ポルタ
ネッダ(コロンビーナ)、ラケーレ・スターニシ
ペッペ(アルレッキーノ)、吉田浩之
シルヴィオ、与那城敬
村人、岩本識 塩入功司
TOKYO FM少年合唱団
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以上
レナート・パルンボ 指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
新国立劇場合唱団
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ヴェリズモ2本立て、久しぶりに観ましたので、ニュープロダクションと言われても言われなくてもあんまり関係ない。
両方の舞台はセッティングが同じ。パリアッチ(Pag)では、カヴァレリア・ルスティカーナ(Cav)の廃墟のコロシアム風な広場前に旅の一座の大きな馬車か車両のような木車が右左に1台ずつある。劇中劇が始まるときは消え、代わりに劇中舞台の上にネオン風なイルミネーション。いかにも出し物を始める雰囲気。
全般的に演出よりも美術、照明の妙が際立ったもの。
Cavでは大きなキリスト像、そして舞台を覆う均質な薄暗さ、間奏前の情景の動きや小道具は、そういうストーリーではあるのですが、宗教色がかなり濃い。Pagでは一日の時間推移が良くわかるもので、また劇中劇では衣装やイルミネーションそして個別の配役に当てたスポットライト的な照明が絶妙。鮮やかな色彩の舞台でした。ともするとケバクなったりするものですが、全くチープさを感じさせない引き込まれる美術と照明だったと思います。
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Cavの印象としては、なんだかとにかく演奏がスロー。こんなにゆっくりしたものだっけ。合計のデューレーションとしてはそんなに時間のかかるものではなかったと思いますが、最初の合唱のスローさはリズムを排しオルガン風なハーモニーでゆっくりと。これ以上遅くすると息が続くのかしら、隙間風のほうが問題になるのではないかというぐらい際どかったと思います。このような雰囲気が全情景に漂っていて、アルフィオの登場などと言っても角の取れた軟らかいもの。全てが情緒的なおもむきで最初から悲劇的な要素が濃く出ている。
それから、オーケストラに対しては思いの外、弱音重視になるところがあり、そういったあたりは結構デリカシーに富む。
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ソリストたちにはどうなのかな、息が切れない程度に思いっきり歌えるような感じかな。最初のトゥリッドゥの歌は舞台奥から、正面手前、聴衆から見て後ろ向きのサントゥッツァに向かって投げかけるもので、既に全力投球。余計な評論は野暮です。
サントゥッツァのルクレシア・ガルシアは写真で見るよりかなり若い。耐久力ありそうです。少しドライな声質で思いっきり押して歌う。タイトルロール的な体当たりの出来る歌唱も大丈夫そう。アラファオは印象がちょっと薄くなってしまいました。
おしなべてデコボコのないバランスのとれた布陣でよかったと思います。
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パルンボという指揮者はこの新国立で何度か振っているようですので、もしかすればこれまで聴いたことがあるかもしれませんが、積極的に確認したことはなかった。
このCavは最初からぐっと抑えた演奏で、最後の劇的な幕切れまでよく緊張が持続したと思います。部分的にこれ以上のスローなテンポになると別ワールドに入っていくような気がするところがあり、少し異なる角度からこのオペラに光を当てた演奏と感じました。終わりにたどり着くまであっという間だったような時間がかかったような、いろいろと思わせてくれる演奏でしたね。
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後半のPag、
オーケストラがCavよりかなり派手に鳴る。ストーリーが明瞭で、役どころのキャラクターも明確。歌い手たちも自分の持ち分を思いっきり歌っている。ドラマチックで聴かせどころ満載。
前口上自体が思わせぶりなオペラですけれど、トニオのヴィットリオ・ヴィテッリはあまりくどくなく、やにっこさもなく気張らずに道化師の悲哀を歌う。この冒頭、肩の力が抜けていて安定したいい歌唱でしたね。
幕が開きその後の「美術、照明」の鮮やかさが印象的な舞台で、トニオ、カニオの衣装はフィットしている。カニオ座長のグスターヴォ・ポルタはちょっとのっぺりとなる部分があり、うまいのかちょっと違うのかわからなくなるところがありましたけれど、ご本人は自信満々で確信的に歌っているので、どうのこうの言えなくなってしまう。
カニオ、トニオ、この二人よりクリアな歌いだったのがネッダのラケーレ・スターニシ、情景によってはネッダ中心に歌っているようなところもあり、結構な頑張りでした。このお三方、これ以上むきになって頑張ると舞台がどろどろになってしまうかもしれない。ちょっと華奢で品のあるシルヴィオ役の与那城敬がうまく食い止めていたとみるか皮相的とみるか分かれるところではある。
劇中劇の始まりにトランペットと太鼓が舞台の上でファンファーレする。つまり二人だけ、劇は4人、観客となる合唱団あわせ、この物語に本当にジャストフィットな規模だったと思います。小さい規模のほうが効果的な演出、正解。
明るい劇中劇と暗いコロシアム、合わせた衣装、スポットライトを適切に動かす照明。
ダイナミックがものすごいオーケストラの演奏、ドラマチックの二重構造は劇中劇という輪だけではなく、心理の構造までよく表現出来ていて秀逸。
それにしてもペッペ、誘うほうも誘うほうだが、それに乗って居酒屋に行ってしまうカニオ座長、酒が事の起こりか。旅の一座、まだ劇の前だというのにね。
通奏低音的に、もてすぎな女はどうかという問題点も内在しているわけですが、それは酒によって顕在化してしまった、という、酒は災いのもと。おいしくもあり苦しくもある。
充実した一夜でした、ありがとうございます。
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追:
イタオペ定番の割り込み拍手、これ自体気になるものではなく積極参加するのですけれど、この日は微妙にフライング気味の知ったかぶり拍手が気になりました。誘発されたかのように周りも違和感のある拍手、バラバラです。盛り上がりがずれるような拍手。
みんな舞台に熱中していて拍手どころではない感じで、様子をさぐっているようなところがあるなか、二三人ほどだと思いますが、知ったかぶり拍手が場と聴衆の心理状態を壊しにかかっていたようで残念でした。
無理に真っ先になってフライングする必要はありません。知ったかぶりが曲を知っている以上に世間を一番知らないのですよ。やめましょうね。
おわり