1983-1984シーズン
今日もズービン・メータがキャンセルしたため代役の登場です。
1984年4月10日(火) 7:30pm エイヴリー・フィッシャー・ホール
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
ピアノ、ブリジッテ・エンゲラー
フランク/交響曲
ヴァツラフ・ノイマン 指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック
WQXR1984-12-9、3:05pm放送
●
例のメータのキャンセルで思いもかけない指揮者の登場となった。
ノイマンはニューヨーク・フィルハーモニック・デビューということらしいが、なにしろチェコ・フィルの指揮者であるため、みんなよく知っているものと思われる。
何度か聴いたことがあるが、久しぶりにこうやって指揮姿をよく見ていると、ひじを伸ばしたいわゆる昔風のスタイルに見えるが、全体に気品があり、派手さがなく、アメリカでアクション風にきたえられたスタイルとはひと味違うと思う。カラヤンの振り方と似ているところもある。
フランクから出てくるスケールの大きな音楽。スケールが非常に雄大でフランクの音楽に特有な気品のある音楽となっていた。
第1楽章からして非常なスローテンポでなおかつ重厚。
ニューヨーク・フィルハーモニックの表現の豊かさが音楽を大きくし、このスローテンポにもかかわらず、ふちどりがくまなく一点の曇りもなく表現されていく姿はまるでヨーロッパのどまんなかで音楽を聴いているような錯覚に陥っていくようでもある。
第3楽章のトランペット・フィナーレが光輝いて曲は終わるとき、いくら明るすぎてもなんとなく重厚さが尾をひいているようでもあり、このオーケストラの表現能力の大きさに驚くとともに、それよりもなによりもノイマンがこのようにスケールの大きくて落ち着いた音楽を作る指揮者であったことの発見に対する驚き。
前半のピアノ協奏曲。
エンゲラーは男勝りの超馬力。機関車の如き演奏もチャイコフスキーなれば許されるものと心得よう。但し、ノイマンのテンポ感覚は今、スローなものと思われ、微妙に呼吸が異なっていたように思う。また馬力が表現のクリアさを失うときそれは現代にはマッチしがたいもののような気がする。
おわり