2018年6月25日(月) 7:00-9:25pm 東京文化会館
ブラームス ピアノ協奏曲第1番ニ短調Op.15 24-14+12
ピアノ、ユリアンナ・アヴデーエワ
(encore)
ショパン ノクターン第20番 遺作 4
Int
ドヴォルザーク 交響曲第8番ト長調Op.88 10-11-6+9
(encore)
ブラームス ハンガリー舞曲第17番 4
ブラームス ハンガリー舞曲第21番 2
ヤクブ・フルシャ 指揮 バンベルク交響楽団
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2010年ショパコンチャンピオンの弾くブラームス1番。ヘヴィー級の曲。
アヴデーエワはその2010年ほやほやの演奏を聴いたことがあって、その時の印象は柔らかな感じだった記憶。今日の演奏は力強さにしびれた。
かなり強い垂直押しで、音幅がありおしなべて強靭で光り輝く。時に両手で鍵盤かきむしり風になりその両腕がサイドバックに投げ出される。ガチガチシンフォニーのようなこのコンチェルトにガチで向き合っているようだ。音の深さが初楽章の縦進行のような角度のついた響きのこの曲に相応しい。もはや、シンクロ進行で。アヴデーエワもなりきりのシンフォニックワールド全開でしたね。大規模編成の作品に相応しいプレイで、オケ&ピアノの醍醐味を満喫。
一変して中間楽章の静謐な味わい。まさしくコクのあるブラームス、であるのだが、音符の繋がり具合が自由でなにやらモダンミュージックのキラキラとした多彩な響きを聴く様な心地になってくるところも。こうゆうところも彼女の真骨頂なのだろう。味わい深い。
終楽章は進むにつれてジワジワとしたうねりが出てくる。ナチュラルな勢いとでも言おうか。ブラームスの湧き出すヒート感。なんとも言えずエキサイティング。本格的な造形美に過ぎる作品ではありますね。正面突破のアヴデーエワの大胆不敵な演奏と見ました。凄い作品に凄い演奏。折角来日してくれた指揮者オケ、この演奏では忘れてしまいました。
アンコールはノクターン遺作。本編50分で放心状態だったので、ハッと忘れていたものを思い出した気分。来たかという感じ。ブラームスとはガラリと雰囲気を変えてウェットな滴が流れ伝わる。あまりの素晴らしいピアニシモの呼吸にため息。ホールの空気がピーンと張りつめる。しびれる。
オケのしもて奥に立ちすくして聴いていたフルシャもしびれ模様。
もはや、ここまでで、満腹状態。
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前回のバンベルクは音がバルブに詰まっているのを無理に出している気配があったのだが、今回はそんなことも感じられなくて、まずは開放し、出た音はそのあとで色々と考えて調整していけばそれはそれで前向きなやりかただ、と言っているように聴こえてくる。
なかなかホットなコンビで相性が良さそうだ。シナジー効果的な勢いもちらほらと見え隠れする。ウィンドをはじめとするノリの良さも好感。そのドヴォルザーク、途中からチェコのオーケストラでも聴いているような気分になる。歴史的、地理的な背景もあるしあながち錯覚とも言えず。
フルシャの意思がそうとうに入り込んだドヴォルザーク、作為のやにっこさよりもやる気が前に出た好演でした。
アンコールのブラームスの渋め2曲。チェコとドイツ物が中和されていくようないい演奏でした。
おわり