河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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2490- ナヴァラの娘、パリアッチ、柴田真郁、東フィル、藤原歌劇団、2018.1.28

2018-01-28 23:26:59 | オペラ

2018年1月28日(日) 2:00-5:00pm 東京文化会館

JOF プレゼンツ
マルコ・ガンディーニ プロダクション


マスネ ナヴァラの娘 (jp)
キャスト(in order of appearance)
1.ガリード、村田孝高(Br)
2.アニタ、西本真子(S)
3.アラキル、持木弘(T)
4.レミージョ、大塚雄太(Br)
5.ラモン、松岡幸太(T)
6.ブスメンテ、安藤玄人(Br)

Ⅰ 32
夜想曲 4
Ⅱ 11


Int


レオンカヴァッロ パリアッチ
キャスト(in order of appearance)
1.トニオ、須藤慎吾(Br)
2.カニオ、藤田卓也(T)
3.ペッペ、澤崎一了(T)
4.ネッダ、佐藤康子(S)
5.シルヴィオ、岡昭宏(Br)
アクロバット(Pag)、由布直輝

Ⅰ 8-41
Pause 4
Interlude 4
Ⅱ 22

 

柴田真郁 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
藤原歌劇団合唱部
多摩ファミリーシンガーズ


まずは体当たりの演技と歌唱にブラボー!
日本初演となるナヴァラの娘、これとパリアッチのコンビネーションだとさしずめNav/Pagといったところか。

ガンディーニ・プロダクションは二つのヴェリズモ舞台に連関を持たせたもので、一つ一つの内容の凝り具合も含め秀逸、素敵な出し物となりました。
シチュエーションがまるで違うオペラ、ロール女性の歌い手は双方一人ずつ。あとは男の世界。

ナヴァラの舞台は立て板が柵みたいで昔の戦いを思わせる。グレイがシックでいくさの物々しさは軽減され落ち着いているところもある。けばくないのがいい。
いくさ物と絡む恋物を50分弱の中で表現するのは簡単な話ではないと思うが、それはマスネの結果であって枠ありきの話ではないとは思う。
とは言え、第1幕7景、第2幕5景あり次から次に動くので、それぞれの音楽、歌は短いもの。幕間の夜想曲はブルーで夜の色彩感、寄り添う音楽が美しい。物語の進行では現れない敵将ズッカラーガがナヴァラに刺殺されたのはおそらくこの夜想曲の段階なのであろう。不気味な静けさを湛えたノクターンと言えるかもしれない。
アラキルの父レミージョの思うところや、アラキルの最後、それにアニタの狂乱、等々、この短い中に身振り手振り動きだけで聴衆が全てを理解するのは困難。演技する方も万全であったとしても聴衆に対する能動的な理解までさせるのは難しいと思う。
そのような端々感(はしばし感)はあれど、タイトルロールのアニタ役の西本さんは体当たりの演技と歌で強烈なインパクト。お金というレミージョのハードルが場を動かしていき、最後の狂乱のエスカレーションまでテンションを上げ続けながら歌い切らないといけない。お見事な西本歌唱演技でした。もう、物語というよりこういったことで盛り上げるのがベストなオペラの気がする。
残りの男衆もよく練られたもので十分な下稽古があったと推測される。緩慢な動きが一切ないというのもいい。エネルギーが満ち溢れたもので見応えもありました。

ドラマチックな視点をどこにみるか、色々と考えさせる舞台でした。いい演出、歌、演技、良かったと思います。

後半のパリアッチ。練られた舞台、全キャストの歌と演技、全て秀逸、特に2幕はこちらも舞台の聴衆にでもなったかのような気分で、白熱の演技を浴びた。オペラの愉しみ、フル堪能しました。

舞台はナヴァラの娘と同じ形状。いくさのあとの芝居小屋、そこに悲劇があるとは思ってもいない人たちが観客となる劇。こちらは前物語と劇中劇があるのでそこらへんのつながりもよく考えられていて、自然体の移行ですね。原色の色彩感はあるもののこちらもけばくないのがいい。

トニオは舞台袖から、仮面も何もないハンサム須藤が正装で現れ、聴衆席に降り前口上を歌う。須藤は容姿もきまり歌も万全、惚れ惚れするもの。この後の展開なんて思いつかない、衣装も含め。
正装で聴衆席から舞台を指しながら歌うその姿を見ていると、これから始まるのは二重の劇中劇ではないのかといった錯覚に陥る。ここでのトニオと舞台のトニオではひらきがあまりに大きい。インパクトのある演出ですね。トニオは歌い終え緞帳の隙間から舞台の人に。
インパクトと言えば、第1幕大詰め座長カニオが衣装を着けろを歌う。そして続く間奏曲でカニオが幕の前で衣装を着けるパントマイム。役ずらし、時間ずらし、の妙なのか、非常に印象的なシーン。凝った演出。

ドラマチックな劇中劇の前に、その倍以上の時間を要する第1幕。まず、ここで人間模様を見せておいて、聴衆の頭に叩き込ませる。トニオ、ネッダ、カニオ、ペッペ、シルヴィオ、皆さん役どころがドンピシャでツボ。キャラクターなシンガーたち。ストーリー展開に合わせた歌、少しずつ熱を帯びカニオの悲哀の歌い口で最高潮へ。

劇中劇、ドラマチック、キャラクターシンガーたちの名唱、名演技を堪能。付け足しのような演技は一切ない。特に舞台人になり切ったネッダ佐藤、お見事という言葉しか見つからない。主役はネッダではないのか。
凝ったマルコ演出。熱演5人衆。圧巻。
カラフルでシックな舞台、群衆の統率された動きと歌。本当によくまとまっていてオペラを満喫できました。
悲劇のストーリーではあるのだが、トニオ須藤が、これで芝居は終わったと言う、一体どの芝居が終わったのだろうか、二重の劇中劇での問いかけのように思え、どれが終わったのか。

柴田真郁の棒が俄然素晴らしい。硬派な棒で非常に引き締まったもの。東フィルサウンドがギュッと絞られて一点に向かうプレイは圧巻。
後ろ髪を引かないすっきりとした棒は劇の内容を引き締めていて歌い手に活力を与える。エネルギッシュで力感が有り、生き生きとした音楽が流れる。オーケストラも好調でどんどんついていく。素晴らしい。
パリアッチのエンディングに魅せたムーティ・フィニッシュも決まる。右腕の左首での静止アクションですね。


パリアッチのあと、舞台挨拶にスタッフの方たちも出てきました。演出ガンディーニ、美術グラッシ、衣装モッレージ、あたりですかね。日本の方は照明の奥畑さんですか。
皆さん勢ぞろい、日本初演の舞台、それに見事なパリアッチ。ありがとうございました。
おわり






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