河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

1371- タンホイザー、エルガー2番、ダニエル・ハーディング、新日フィル2012.6.29

2012-07-02 20:21:46 | インポート

2011-2012シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちらから。
2011-2012シーズン
.
2012年6月29日(金)7:15pm
サントリーホール
.
ワーグナー 歌劇「タンホイザー」序曲~ヴェヌスブルクの音楽(パリ版)
.
エルガー 交響曲第2番
.
ダニエル・ハーディング 指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団
.

タンホイザーは一音目から非常に心地よい響きで耳にやさしい。うっとりするような魅力的な音だ。そしてヴェヌスブルクの最後の最後は、リタルダンドから減速を推し進め、合わせて曲を通してのメゾフォルテ音楽からひたすらピアニシモに減衰し、最後は停止するのが先か、音が無くなるのが先かといった様相を呈し、ワーグナーのうねりは皆無、ドラマチックの対極で、タンホイザーのオペラストーリーも無視した、衰退の美のような演奏表現に驚きました。彼流の贖罪表現かもしれないところはありますが。
これはこれでありかなとも思います。オペラが不慣れという噂のようなことはツイッターでヨーロッパのオケピットの独り言を目にしたこともありますが、後半のエルガーや、これまで何度か演奏会に接してきた表現内容を考え合わせると、もはや不慣れどうのこうのではなく、ハーディングの今のスタイルであり、それは極めてあくが強いもの。ディテールに光をあてる、換言すれば、こだわり。その為にはテンポを落とす必要がある。といったロジック。ディテールとテンポどちらが先なのかわかりませんがいずれにしても、弱音の美学と微にいり細にいりの表現が一体化している。うねりではなく静止のエクスプレッションですね。
.
後半のエルガーについては言を俟たない。
スタイルは前半とほぼ同じ。エルガーは交響曲ですし形式的、構造的な意味合いをワーグナーよりもう少し前面に出してもいいと思うのですけれど、そうはなっていない。特に感じたのは主題推移の経過句への必要以上のこだわり、経過句が経過せず前半のワーグナーのように微に入り細に入りの表現になっている。これがどういう意味、解釈なのか分かりません。
とにかくこのように経過句にもこだわるあまり全体のフォルムがバランスを崩しシンフォニックではなくなり、またエルガーらしくないというか思ってもみないエルガーでした。耐え切れず緊張の緒が切れちょっと緩んでしまいました。必要以上の愛着が必要なのかもしれませんね。
.
エルガーの大編成曲の聴き方はイギリス・ブラバンのような響きを堪能しながらデリカシーも感じとる、構造も理解しながら。そんな聴き方をすると割と楽に聴けるのでいつもそんな感じ。(ノーブルな聴き方は出来ませんw)
この2番の交響曲はどの切り口からでも1番の方に移って行ってそのまま続いてもあまり違和感のない曲で、あれ?いつのまにか1番になっている、そんな感じのする曲ですね。
1番ほどの閃きはない。
.
ハーディングがこのような状態ですので、例えば第3楽章の爆発とか、第1楽章結尾の駆け上って何かをこじ開けるといったあたりの表現が決まらない。また最終楽章のピアニシモのエンディングに関しても、最初から始終このような演奏表現である為メリハリがなく、終わりなのか途中の減衰静止なのかとまどう。
この日の演奏のよかったところは曲自身によるところが大きいと思う。つまり曲を消化表現できていないと思いました。
この感じでブルックナーをやったら、聴かなくてもだいたいわかります。ちょっとそれますがマーラーは振れるけど(振れると思っているけど)、ブルックナーが今いち、という指揮者は日本人でも多いですが、時間推移する構造の力学というと音楽なのに理系っぽいとたたかれてしまいますけれど、まずそこらへん修めてから振りなおしてみるのもよいかと思います。最近、マーラーの構造に光をあてた棒を振るのはアシュケナージぐらいではないか。昨今の日本人指揮者や日本でうけている外国の指揮者の内容は変態とは言わないが、かなりグロテスクな方向に向かっていると思う。一度、構造に光をあててみてくださいねと。マーラーが振れるというのは錯覚だと思います。大部分振られている。
.
ただ、ハーディングはたんにそれだけの指揮者とは思っておりません。曲に対する思い入れと表現の思い込みが今はハイブリッド化している、そのように見えます。だんだんと開けてくるとは思いますが、でもこれらの要素だけでは足りないということの認識も必要です。ですから、唐突ですが、フルトヴェングラーは全てを持っていた。全てを表現できていたから偉大だったんですね。今のハーディングに哲学を求めるのは酷なのか。
おわり


人気ブログランキングへ


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。