ユニバーサル・ミュージックというのは主要なレーベルが全部合体してしまった会社であり、実につまらなくなってしまった。道路をまず全部アスファルトにしてしまって、あとから修正を加えていこう、みたいなおおざっぱで粗末、音楽に対する真摯な姿勢なんてあんまり見えてこない。
そんななか、20世紀の巨匠シリーズ、が何年か前からはじまった。混合レーベルの強みを生かし、一人の指揮者にスポットをあて、これでもかこれでもかと発売しまくる。
どうしようもないユニバーサルだが、この企画は買い勝手がよく変に気にいっている。
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第11回は2007年7月25日発売の、アンタル・ドラティの20タイトルだった。(全曲目は下部をみてください。)
ついこの間、ようやく全部を聴き終えた。
一言で言うと、素晴らしい、、尽きる。
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オーケストラは、ミネアポリス(ミネソタ)、デトロイト、ロンドン、ロイヤル・フィル、フンガリカ、など。
どれもこれもいい出来で昔のスタジオ録音の緊張感が伝わってきて心地よい。
そんななか、一番驚いたのは、ロンドン響を振ったベートーヴェンの第7番。このみずみずしさ。ベートーヴェンになにか新しい息吹をあらためて感じさせてくれるような素晴らしい出来だ。
また、新発見もある。コダーイの管弦楽全集。絵では2枚組と書いてあるがこれはうそで3枚組。コダーイの管弦楽はアメリカの近代音楽に非常に近いものを感じさせる、実に魅力的な音楽であった。
音的には、ロンドン響のものは引き締まっている。デトロイト響は透明だが厚いガラスのようなサウンド。マーキュリーのリヴィング・プレゼンスは録音時期が古いにもかかわらず驚異的な音で、ミネアポリスのういういしい演奏とともに一番魅力的。
オケの腕は確実にロンドン響がトップ。フンガリカはかなり劣る。
いずれにしても、久しぶりに聴く数々の曲、こんなにも魅力的だったのかとあらためて音楽に舞い戻る力を与えてくれる。
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それで、ユニバーサルはここでも致命的な企画にしてしまった。
1枚のCDのオーケストラの組み合わせがグチャグチャなのである。どうしてこんな失敗を犯すのか。
作曲者毎にまとめる、小曲を詰め込んで枚数減らし、その真意はわからないが、それぞれの時代のそれぞれのオーケストラの魅力をもののみごとにバラバラにしてくれた、史上最悪の組み合わせ。この会社の企画人たち、なにを考えてモノづくりをしているのだろうか。
今、このような組み合わせは時代おくれであり、1枚のCDの収録時間が長ければ長いほどいい、みたいな時代は遠くかなた、それぞれの特色を生かした主張のあるまとまりの1枚のほうが大事。そんな時代。全く分かっていない。
ちょっとちがうが、どこの会社も飽きることなく作り続けるベスト盤、あんなものはクズだ。買い手にどんな判断をさせたいの?本当にダメな企画。。
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それでドラティであるが、ここにあるのが彼の全ての録音というわけではない。例えば、マーキュリーにはまだまだあり、コープランドもの、チャイコのナッツクラッカーなど魅力的な録音がある。
この最悪な組み合わせのCDで、最高の演奏、というものを宣伝するつもりはないが、下記の曲をみればいかに魅力的なものであるかわかると思う。
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