2019年3月23日(土) 4pm トッパンホール
瀬川裕美子 ピアノ リサイタル vol.7 オルフェウスの庭
バッハ オルガン・コラール 汝の玉座の前に今や歩み寄り BWV668 4
ブーレーズ ピアノ・ソナタ第2番(1948) 6-9-2-9
ピート=ヤン・ファン・ロッスム amour (2018) 世界初演 12
Int
ストラヴィンスキー ピアノ・ソナタ(1924) 3-5-3
近藤譲 三冬 委嘱新作(2019) 世界初演 7
バッハ パルティータ第6番ホ短調BWV830 22
(encore)
ブーレーズ 12のノタシオン 第2曲 0:30
バッハ コラール 我らの苦しみの極みにあるときBWV432 (弾き歌い) 1
以上
ピアノ、瀬川裕美子
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瀬川さんを聴くのは2度目。今年のテーマはオルフェウスの庭。これはパウル・クレーの絵の事ですね。
充実のプログラム冊子はとてもその場で読み切れるものではなくて、じっくりとあとで読むことに。
プログラムは6作品。最初と最後にバッハ。前半と後半に世界初演がひとつずつ。練られたプログラム、充実の演奏、納得の冊子、申し分ないもの。お目当てはブーレーズかな、などと思いつつ6つの庭に足を踏み入れてみる。
最初にバッハの庭。オルガン・コラール。
バッハ最後期の作品で、彼女の解説文を待つまでもなくかなり考えぬかれたというか、言いたいことが沢山ありそうな内容。ブーレーズを絡めた解説は面白いし深みを感じますね。バッハの音は太くて、重い。
ブーレーズの庭。一曲目で暗示させたブーレーズが2曲目。
12音の解体、それなのになぜ楽章は4つのままなのだろうという思いは、それはやっぱり、中に入らないと解体できないということなんだろう。充実の作品で何度聴いても飽きることがない。作曲家のインスピレーションや閃きの持続を感じる。一瞬ではなくて連続する閃き。この時代のやっぱり天才技。
瀬川さんのプレイは速めで、どんどん先に進んでいく。響きはとってもまろやか風味。極度な峻烈さを前面に出さずとも分解能を味わえる。終楽章のアップテンポは迫力ありましたね。加速、そして、ひとつ呼吸を置いてゆっくりと終止。機械に油が注がれたような瞬間でした。お見事でした。
12個の音の配列が、譜面にある内は分かりやすいが、一旦音になるとわからなくなる。鳴れば理解できる音楽ではなく、鳴ればわからなくなる音楽。感覚が真逆なものを意識することなく12音屋さんは作ってしまったのか。ブーレーズはどうなんだろう。今日の2番、たしかに、ワルトシュタイン聴こえませんか。
3曲目はロッスムの庭。amour愛、世界初演。
12分ほどの曲。上昇音形の進行、湧きたつハープのような響き。甘いメロディーも印象的です。
この作品を作ったご本人登場。
以上、前半3曲。休憩を置いて後半へ。
ストラヴィンスキーの庭。
ストラヴィンスキーのピアノソナタはクラッシックな型にはまっていてわかりやすい。このての作品は規模感あってもどんどん吸収できる。
演奏はまろやかさとメリハリの融合。頭の中できっちりと整理整頓できてる感じ。
後半二つ目は近藤の庭。
タイトルの三冬とは冬の三ヶ月、神無月・霜月・師走のこと。委嘱作品の世界初演。
途切れる音、ちょっとイメージがわかない。ピンとこないものがある。音楽ではないものへの思いも譜面に書いているような感じだ。
最後は再びバッハの庭。
パルティータは大きな作品。前半のブーレーズ、後半のストラヴィンスキー、両ソナタの空気圧を一気に解放感しているような趣きで、一気呵成な流れで素晴らしくノリの良い演奏。まろやかピアノ、リラックスバッハ。鮮やかでお見事。
以上6作品おわり。アンコール2曲。
アンコール2曲目はバッハの弾き歌い。昨年も声があったので驚くことはないけれど、知らないとびっくりだったかもしれない。彼女の歌は自由を感じさせてくれるところがあって、こういってはなんだがガチの解説プログラム冊子とは一味違うところを魅せてくれる。
そういえば、アンコール1曲目のノーテーション2番。これでも一声あったよね。なんだか晴れた感じ。
本編共々濃い内容のリサイタルでした。
それと、トークしないのよね。これがすごく良い。トークどころではないのかもしれない。集中力の要る仕事。
今年もありがとうございました。
おわり