河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

1365- ラフマニノフ3番 上原さん、ラザレフ日フィル2012.5.19

2012-05-24 00:10:00 | インポート

2011-2012シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちらから
2011-2012シーズン
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2012年5月19日(土)2:00pm
サントリーホール
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ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番
 ピアノ、上原彩子
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チャイコフスキー 交響曲第3番ポーランド
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アレクサンドル・ラザレフ指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
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3番づくしで両方とも大好きな曲。
ラフマニノフは上原さんが聴衆を完全に飲む勢いで素晴らしかった。黙らせるといった感じ、みんな聴き入っている。
曲は短い導入を経ていきなり第1主題にはいり魅惑的な響きとなる。主題の繰り返し部分でピアノは彩りを添えるが、ここ、数多のピアニストは低音部分からいきなりでかい音ではいるのだが上原さんはひっそりとしている。この自然感覚!聴き惚れた。また、このデリカシー側の表現だけでないことは例えば第3楽章を導入するアタッカのこれまたピアノ向かって左よりの鍵盤、低音ダダッダ、ダララッタタ、あたりの力強さを聴けば、上原さんの表現の振幅の大きさがよくわかる。
第1,2楽章の滴る情緒と気品のある抑制された響き、タッチの深さを自由に変えているような微妙なニュアンスの響き、美しかったです。ここ、たしかにブラスは不要ですね。ホルンは横に置いて、ブラスセクションはかろうじて第1楽章結尾でソロ・トランペットが弱音で締めくくるだけで、第3楽章へのアタッカまでみんなだんまり。上原さんのピアノはこの第2楽章まで十分堪能できました。音楽とだけ対峙しているそのようなアトモスフィアがその姿勢からもうかがうことが出来ました。日本人ソリストが聴衆をだまらせるような一夜、久しぶりに味わった気がします。
この曲はホロヴィッツが好きで何度も演奏、録音しておりますけれど、上原さんも弾きつづけてほしい。全く名人芸を感じさせない、そして鼻につくものがまるで存在しない、でも、あとに残ったものは、言葉ではなかなか言い表せないカスク・ストレングスの上澄みのような味わい。技術とか経験、練習の集積だと思うのですが、その気配がどこにもない、ただ、自然があった。自然とはそうして創られたんです、とでも言われているそんな感じ、素晴らしい演奏でした。
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後半のポーリッシュ、この極度にチャイコフスキー的な曲も好きです。最後は譜めくりが大変な曲ですので暗譜するしかない。3拍子系4拍子系ところかまわずのシンコペーションしまくりでスリルあり。
この日の演奏は、一人指揮者だけが爆振りでオケの方は爆演とはいかなかった。ラザレフは向かって右側のコントラバスをもっと唸らせたかったのはあのアクションからもよくわかった。ベースがロシア風にブイーーンと鳴らないと今一つノリがよくない。アクションほどオケは鳴っていない。指揮者の頭の中にはたぶんこの曲のイメージがしっかりとあって、それと少し違っていたと思う。そんなそぶりはなかったけどね。でも空回り。
音が少しやせて聴こえてくるのはそのベースのこともあるがウィンド含め全般的に、ソロ、アンサンブル、ともにパッセージに膨らみがないから。換言すると歌がない。ただピッチとアインザッツがあっていればいいというわけにはいかない。どなたかツイッターでつぶやいておられたが、録音されたCDだと音が痩せて聴こえるので断然、実演の方がいいと。実演の問題点が録音でより鮮明になったのだと思う。逆の現象なら話がはやいのだが、このツイッターさんの通りだと問題はより大きいと言わなければならない。
原因はわからない、単に今自信が少しなくて、ならいいが、スキルの低下なら、そんなことはないとは思うのだが。
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ラザレフの解釈は書いた通りですけれど、細かいところよりも、バーを一気に振りまくり全体の流れ重視、それが音楽の迫力につながるといった感じで、みんなのってこいよ、といったところ。ブラバンの指揮者でもたまにそういう人はおりますがコンクールでは高得点にはならない、そんな感じ。
楽章やフレーズのエンディングもザーァ、と切り上げていくスタイル。ヨーロッパ系のウェットな解釈とは異なる。ロシアオペラならどうだろうか、歌手は歌い易いかもしれない。
どっちにしても、ラザレフの苦労がしのばれる振りで、あれだけ大きくあおってあげて、それでも今一つ引きずられている感じのオケ・サウンド。今のこのオーケストラには冬の日の幻想の方がよりよい表現が出来そうな気がする。
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公益財団法人化に向けてのご苦労は大変なことと思いますけれど、サウンドの雰囲気は時代のトレンド感覚ではなく、旧の呼吸で息をしているように感じた。
おわり
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