東郷町議会議員 かどはら武志(日本共産党)

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町独自の私学助成の廃止に反対しました

2010年12月21日 | 東郷町議会

 12月議会が終わりました。議会最終日には、当局提出議案や請願、意見書などの採決があり、採決に先立って、議案などに対する議員の意見表明の発言(討論)があります。

 私は、討論こそが議会の華だと思います。当局が提出する議案に対する議員の考えが明らかになるからです。ですから、一般質問には傍聴が多いのに、討論がある最終日に傍聴が少ないことを常々ざんねんに思ってきました。

 とは言っても、ほとんどの議員が討論を行わないため、自分が好きな議員がめったに討論をしない議員だという人にとっては興味が湧かないかもしれません。

 さて、いつもは傍聴者がほとんどいない議会最終日ですが、今日はざっと20人以上の傍聴者がおられました。私がツイッターで傍聴を呼びかけた効果がと喜びましたが、そうではありませんでした。私学助成の拡充を求める保護者さんたちが、誘い合って傍聴に来てくれたそうです。

 私は、先に書いた事情から、一般質問よりも討論に気合が入る方ですが、こんなに多くの傍聴者がいるところで討論をした経験はなく、とても緊張しました。しかし、東郷町の私学助成の廃止が決まるかもしれないという報を受け、議会まで駆けつけてくださった方々を前に、下手な討論はできません。もちろん原稿は事前に用意していますが、早口になってしまったり、割舌が悪くなったりしないよう、落ち着いて読むよう心がけました。

 少々長くなりますが、討論原稿を掲載します。

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 平成22年度一般会計補正予算(第4号)に反対の立場から討論します。

 反対の理由は、10款教育費、1項教育総務費の、高等学校等教育振興事業の私立高等学校等授業料補助金の全額を減額補正する内容、つまり、東郷町独自の私学助成を廃止する内容が含まれるからです。

 先の質疑での教育委員会の説明では、国と県による授業料補助が大幅に増えるため、東郷町が年額1万5000円の授業料補助をなくしたところで、受ける補助金の額が減ってしまう生徒はいないので、町からの補助をなくしてもいい、とのことでした。また、国と県が制度を拡充したので、町としての役割は終わった、今後は国と県の責任で私学助成を行うべき、とも説明されました。

 確かに、教育委員会が説明するとおり、国と県による私学生徒に対する授業料補助は増えています。私学を選択肢に入れる世帯がいちばん多いとされる乙Ⅰと乙Ⅱの区分、つまり町民税の所得割額が18900円以上136500円未満の区分の世帯と、244500円未満の区分の世帯では授業料軽減月額がそれぞれ19100円、14200円となり、平成21年度と比較して、それぞれ2000円ずつ増額し、これは年額にすると24000円の増額です。これは、乙Ⅱ区分までの世帯に町が支給してきた年額15000円を大きく超える額であり、教育委員会の説明には間違いはありません。

 しかし問題は、公立と私立との授業料の格差、いわゆる公私格差が、去年までよりむしろ拡大していることにあります。

 ご存知の通り、今年度から公立高校の授業料が無料化されました。そのための財源として、国からは就学援助金が出されています。生徒一人当たりの額は、月額9900円です。就学援助金は、私学の生徒に対しても、授業料軽減のために出されています。先ほど説明した乙Ⅰと乙Ⅱの世帯には、公立高校の生徒と同様、生徒一人当たり月額9900円の就学援助金が出されます。

 さて、ここで先ほどの、国と県による私学生徒に対する授業料補助が増えたという話を思い出して欲しいのですが、昨年度と比較して今年度はいくら授業料軽減月額が増えたかというと、2000円でした。国から今年度から新たに出されるようになった就学援助金は、私学生徒に対しても月額9900円あるのにも関わらずです。一方、公立高校の生徒が負担する授業料がどれだけ安くなったかというと、国からの就学援助金の額そのものである9900円も安くなりました。これにより授業料の無料化という目的が達成されました。

 公立の授業料が9900円も安くなったのに、私学の授業料は2000円しか安くなっていないということは、すなわち月額にして7900円、年額にして9万4800円も公私格差が拡大してしまったのです。

 その原因は、愛知県が昨年度は総額68億円あった県独自の私学の授業料助成制度の予算を、今年度は32億円に削減したからです。

 以上のことは、私が長々と説明するまでもなく、今年の9月議会の最終日に全員一致で可決され、愛知県知事に送付された、意見書案第3号「愛知県の私学助成の増額と拡充に関する意見書」に記されている通りです。

 念のためにその部分を読み上げます。

 「今年度から公立高校が無償化され、私学にも就学支援金が実施された。もしこの支援金が、日本一と言われた愛知県の授業料助成制度に加算されれば、私学の父母負担はかなり軽減される。しかし、県は深刻な財政難を理由に、県独自予算を大幅に縮小し、無償化対象は年収約350万円未満の家庭にとどまっている。とりわけ、乙Ⅰ(年収約610万円未満)・乙Ⅱ(年収約840万円未満)では、公立が11万8800円軽減された一方で、私学助成は2万4000円の加算にとどまり、父母負担の公私格差は大幅に広がっている。」

 このように、愛知県で公私格差が広がっているときに、町独自の私学の授業料補助金をなくせば、東郷町では他市町よりさらに公私格差が広がることになります。愛知県が独自の私学助成制度を縮小している今こそ、町独自の私学助成の役割が大きいのではないでしょうか。

 教育基本法では、すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。と定められています。
 また、第4条第項では、 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって就学困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。とされています。
 更にでは、 私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。

 と、私立学校の公的役割について定義しています。 

 しかし、実際には、私学をよくする愛知父母懇談会の資料によれば、2009年度で愛知県内の私学の初年度納付金は、公立の5倍です。交通などの公共料金で、同程度の内容でこれほどの官民格差はありません。国や県が私学にかけるお金が少ないからです。

 私学助成は、私学に通う生徒も、公立と同じ内容の公教育を受けられるように、学費の父母負担と教育条件の公私格差をなくすための制度です。

 また、私学助成は、公立私立を問わず、自分が行きたい学校を選ぶ自由を保障し、教育の機会均等を実現する制度です。

 この、私学の公的役割についても、先の議会で可決した意見書案第3号にも明快に記されています。読み上げます。

「私学も、公立と同様に、公教育を担う教育機関であり、愛知県下の高校生の3人に1人は私学で学んでいる。私学は、独自の伝統、教育システムにもとづく教育を提供し、教育改革に積極的な役割を果たしてきている。私立高校は、生徒急増期においては、生徒収容で多大な役割を担うなど、「公私両輪体制」で県下の「公教育」を支えてきた。このような事情から、父母負担と教育条件の公私格差を是正することは、長年にわたる県政の最重点施策でもあった。」 

 このような観点から、県内57市町村のうち、38自治体が独自の私学助成制度を維持し、更に増額した自治体は5つあります。特に豊田市は一律1万2000円支給から一律1万5000円支給に増額しました。豊田市の教育委員会は「国の就学支援金が実施されても公私格差が解消されるわけではない」と、私学助成制度の意義を強調しつつ、理由を説明しています。

 こうした中、教育委員会が廃止を決めたのは、東郷町、瀬戸市、津島市、常滑市、岡崎市の5つだけです。特に東郷町は、当初予算で、私学助成の予算を計上したにも関わらず、年度途中で廃止を決めるとはどうしたことでしょうか。就学援助金で授業料補助が増えたとしても、公私格差が広がってしまうならば、私学助成は継続すべきではありませんか。

 いったん廃止を決めたけれども、一宮市と江南市は、復活を決めました。半田市は、予算規模の大幅削減を決めていましたが、一転して予算規模を維持することになりました。いずれも、公私格差を解消するという私学助成制度の意義を十分に理解した上での判断です。

 さて、教育部長は、町独自の私学助成をなくしたとしても、その予算は、教育施策に使いたいと述べました。教育の質を落としてはならない、教育を受ける機会を狭めてはならないという意思による言葉だと信じます。

 また、先ほど意見書案第3号の一部を読み上げましたが、私が申し上げるまでもなく、東郷町の議員は全員、公私格差を是正するための私学助成の意義を十二分に理解しているものと信じます。

 教育委員会において、今一度、私学助成の意義について考え直していただくためにも、この補正予算案は否決すべきです。

 議員諸氏が良識を発揮されるようお願い申し上げ、反対討論といたします。

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 なお、この補正予算案に反対したのは、私たち日本共産党(中川まさお議員、私)と若園ひでこ議員、山口洋子議員(いずれも無所属)の4人でした。若園議員も山口議員も、反対理由は私学助成の廃止で、それぞれの立場から討論されました。

小6までの子ども医療費無料化、全員一致で可決

 来年4月からの実施です。

 私も賛成討論しました。内容は「子育て支援策の中でも要求が強い子ども医療費無料化が、ようやく小3までから小6までに拡大する。しかし中3まで実施している日進市やみよし市と比べればまだまだだ。小6まで実施している豊明市も、中3までの無料化を求める請願を全会一致で採択した。東郷町当局の一層の努力を求めます」というものです。

 私の次に討論した山田議員(自民系無所属)は「小6までの公約が実現していた。良かった」、その次に討論した井俣議員(自民系無所属)は「良かったが独自の福祉医療を拡大すると、国保財政への国からの補助金減額というペナルティーがある」と、それぞれ述べました。

 私は、「もっと頑張れ」、次の議員は「良かった」、その次の議員は「良い事ばかりじゃないけど賛成」。いろんな立場があるものですね。

TPPに拙速に参加しないよう求める意見書も可決されました

 農協からの働きかけがあり、TPPに拙速に参加しないよう求める意見書を全員一致で可決しました。意見書は総理大臣や農林水産大臣などに送付されます。

 日本の農業を守るために、地方議会が声を上げることは重要です。

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