12月22日の記事「12月議会終了。民生委員会で否とされた議案も含め町長提出の全議案が可決」では、町長提出の議案をめぐって多くの議員が討論に立ったことを紹介しましたが、その後に行われた2つの請願(いずれも私 かどはら武志が紹介)についての討論でも、延べ13人(1つめの請願で8人、次の請願で5人)が発言しました。
いずれも、まず私が請願の紹介議員として賛成討論を行いました。
率直に言って、反対討論は「ためにする議論」の類で、事実誤認や勘違い、的外れな発言も散見されました。これらの反対論に反論するために、日本共産党の同僚である中川議員が予定外の賛成討論を行いました。
介護職員の人材確保の意見書採択を求める請願
討論の順番は
- 賛成 かどはら武志(日本共産党)
- 反対 山下律子(無所属)
- 賛成 若園ひでこ(無所属)
- 反対 井俣憲治(無所属)
- 賛成 中川まさお(日本共産党)
- 反対 山田達郎(無所属)
- 賛成 橋本洵子(民主党)
- 賛成 山口洋子(無所属)
(敬称略)でした。
私の賛成討論(大要)を紹介します。かなり長くなります。記事はその後にも続きます。
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介護現場の人員確保が困難になっています。介護は住民の安心に必要な仕事であり、介護業務の安定的な人材確保は必要不可欠です。しかし、低賃金と、少ない人員配置による過酷な労働の慢性化により、離職者が多く、事業所も人員確保に苦労しています。
その解決のためにも、介護に従事する職員が、将来に希望を持って働き続けられるために、給与水準の是正と労働環境の整備など、処遇改善の総合的な取り組みが必要です。人材確保のためにも、介護報酬のあり方を見直し、適正な介護報酬体系を確立することも必要です。
本請願は、これらの要求についての意見書を国に提出することを求めており、東郷町のみならず、全国で良質な介護サービスが持続的に提供されるようにするためにも、ぜひ採択されるよう求めます。
ところで先の民生委員会での請願審査での反対討論で、「質の悪い事業者にも一律にこのようなことを求めることには反対」という趣旨の発言がありましたが、悪質な事業者を理由に、事業者全体についての改善を否定することには道理がありません。悪質な業者に対する取締りは必要ですが、まったく別の次元の議論で取って付けたような反対理由を述べることは、理解できません。
ここにひとつの文書があります。読みます。
市民ボランティア団体「介護施設と地域を結ぶ市民の会」で、昨年行った特養ホーム調査結果をうけて、介護施設の職員体制に関する請願を愛知県議会と東郷町議会に出すことにしました。
今日は、愛知県議会のある愛知県議会議事堂に行き、請願の手続きをしてきました。
県の議事堂には初めて入ったのですが、重々しくて豪華な雰囲気。
市町村議会との違いをしみじみ感じました。請願の内容は、以下のとおり。
議会で採択されれば、国に意見書が出されることになります。介護の質を保つための職員体制を求める意見書の提出を求める請願書
【請願の趣旨】
介護施設において国が求める個別ケアが行える体制が整うよう、職員体制の充実を図るために、次の2点を内容とする「意見書」を提出願います。
1. 介護職員1人に対しての入居者の数を定めた最低基準「1対3」を引き上げ、介護職員1人に対して入居者2人(1対2)に近づけること。また、そのために施設が必要な人材を確保できるよう、介護報酬を上げること。
2. 手厚い人員配置をしている施設が報酬で報われるよう、1対2.5以上、1対2以上など基準を設け、介護報酬を上乗せするなどの報酬体系を検討すること
(理由)
市民ボランティア団体「介護施設と地域を結ぶ市民の会」は、介護保険の始まった2000年から愛知県内の介護施設に対してアンケート及び訪問調査を行ってきました。昨年、2007年度に県内180施設の特別養護老人ホームを調査したところ、なかなか必要なだけの介護職員を確保できず、重度化する入居者の介護に疲弊する現場の姿を目の当たりにしました。施設への訪問では施設長の聞き取りも行い「介護報酬が少なく介護職員の待遇維持が難しい」「介護報酬を見直し、職員に還元されるような体制作りをしてほしい」などの声を聞きました。
特別養護老人ホームの入居者は高齢化、重度化が進み、国が最低基準として定めている「介護職員1対入居者3」という人員体制では、1人1人のニーズにあった個別ケアを提供するのは困難になっています。調査結果では、介護職員の人員体制は、全施設の平均で「1対2.34」。全室個室のユニットケアを行う新型特養では「1対1.5」と基準の倍の人員体制をとっている施設が半数に上がっています。国の最低基準を今の実態に近づけ、国が求める個別ケアが提供できる介護報酬を保障する必要性を痛感します。調査結果で判明した実情を考慮し、意見書を提出いただけるよう切にお願い申し上げます。愛知県議会議長殿
同じ内容の請願を、東郷町議会にも出す予定。
こちらは、私が紹介議員となって請願書を出すので、議会で説明したり、質疑に答えることになります。
一年かけた調査の結果が、国に意見書として上がるかどうかの正念場。
同意を得られるよう、誠心誠意がんばりたいと思います。」
これを書いたのは、民生委員会にて先ほど紹介した反対討論をされた山下議員です。どういうわけか、東郷町議会には、この文章で紹介された請願は提出されてきませんでしたが、愛知県議会には請願を提出されたようです。愛知県議会にこのような請願を提出し、そのことを書いた文章をインターネットで公開までされた議員が、さきほど紹介したような討論のような発言をされるとは、にわかには信じがたいのですが、私の思い違いでしょうか。どうぞ、今からでも態度を改めていただきますよう、希望します。
もうひとつ文書があります。「介護保険制度の抜本的法整備を求める意見書(案)」という表題です。読みます。
これは、去る12月9日に開催された議会運営委員会において、上程などについて議論された意見書案です。提出日は平成20年12月9日となっています。提出者は石川正議員。賛成者は、山田達郎議員、井俣憲治議員、加藤啓二議員、近藤鑛治議員、柘植三良議員、有本洋剛議員、石川道弘議員、近藤秀樹議員、菱川和英議員、水川淳議員、橋本洵子議員、星野靖江議員、山下律子議員の13名。ここで名前があがっていないのは、議長と、共産党の2名と公明党の箕浦議員、そして先の民生委員会において本請願の採択に賛成された若園議員と山口議員です。しかし、議会運営委員会での議論を経て、突然、この意見書案は取り下げられました。どういう経過でこの意見書案を提出しようということになったのか、また、突然の取り下げになったのか、私には分かりませんが、ともかく、本請願の紹介議員になっている私としても、一部、介護保険制度の広域化を求めるなど検討を要する部分はありますが、全体としては賛同したいと思える内容です。それほど、介護職員の確保が切実な問題である、という認識をお持ちの議員が多いということだと思います。「介護保険制度は、制度発足以来9年が経過し国民の理解のもと着実に進んできている。しかし、現行制度の下では、報酬体系を含め人材の確保等制度を支えるのが困難な状況になっている。
特に特別養護老人ホームの入居者は高齢化、重度化が進み、国が最低基準として定めている『介護職員1対入居者3』という人員体制では個別ケアを提供するのは困難な状況になっているなど、現在の実態を十分反映し、国が求めるニーズに応えられる個別ケアが提供できるよう介護の基準を見直すことが必要である。国民が安心して老後を送るためにも、介護保険制度を抜本的に見直し、法整備を図ることが必要不可欠である。
よって以下の項目について強く要望する。
記
以下に示すことを十分考慮し、介護保険制度の抜本的法整備を行うこと。
- 介護職員1人に対する入居者を定めた基準を1対2とする。
- 必要な人材の確保及び介護の質を考慮した介護報酬体系の整備を図る。
- 地域間格差を拡大させないために介護保険制度の広域化を図る。
以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。」
いま議題になっている請願が、給与水準への要求を具体的に述べているのに対し、いま紹介した意見書案は給与水準への言及はありませんが、必要な人材の確保には十分な給与水準の保障が不可欠であることには、異論はないでしょう。
この意見書案に賛成のサインをされながら、民生委員会で反対の意思表示をされた山田議員、石川道弘議員にも、いまいちど考え直していただきたい。提出者であられる石川正議員はもちろんです。
この請願の内容は一定の方向を示した大変ゆるやかなものです。請願者はもしかして、あまり厳しい要求をすれば「無理だ」とはねつけられることを心配して、ゆるやかな内容にしたのかもしれません。いま紹介した意見書案にあるような、特別養護老人ホームでの介護職員1人に対する入居者の基準を3人から2人へとするなど、国に対して強い要望をしようとした議員がいる議会だよ、と請願者に報告すれば、請願者は大いに勇気付けられることでしょう。
ぜひ本請願を採択され、先ほど紹介したような内容も可能ですので、意見書を国に提出されるようお願いしまして、賛成討論といたします。
(以上)
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この討論では、どうしてこの請願の採択を求めるのかという理由に続いて、同じようなことを求めていると思われる(少なくとも私にはそう思えた)議員が民生委員会で反対の意思表示をしたことに対する抗議の意を表明しました。同時に翻意も求めました。
また、12月9日の議会運営委員会で同じような意見書案が議題になったのに、なぜか取り下げられたことも紹介しています。
討論では述べませんでしたが、この意見書案に対しては、議会運営委員会で日本共産党の中川議員が「一事不再議に抵触するのでは」という意見を表明しました。
※一事不再議 議会には、議論が繰り返し蒸し返されることを防ぐために、同一会期中には同じ議題を取り上げない、という原則があります。これを一事不再議といいます。
中川議員によれば、議会事務局が全国町村議長会事務局に問い合わせたところ、次のような見解が得られたそうです。(電話でのやり取りですから、きちんとした見解が文書で残っているわけではありません)
- 請願と意見書という形式の違いがあるので一事不再議には当たらないだろう。
- しかし、もし片方を否決し、もう一方を可決した場合、対外的に説明するのは難しいだろう。
- これは感想だが、議員同士ですり合わせが出来たら良いのでは。
「もしかして」ですが、2番目と3番目の見解が引き金になって、取り下げたのでしょうか。
対外的な説明が難しい場面が想定されたのか? 私とすり合わせるのがそんなに嫌なのか?
私の討論で真っ先に名指しされた議員は、真っ先に反対討論に立たれました。そして「いくつか誤解されているようです」と前置きし、次のようなことを言われました。
- 8割の施設が、禁止されている身体拘束をしている。人員不足が問題ではなく、人権侵害という認識がないことが問題。労働組合の請願だということだが、賃上げを言う前に利用者の身になって欲しい。
- 私が県議会に出した請願は職員配置の基準の強化を求めているが、それに伴って介護職員の給与が下がることもありうる。
介護職員の給与が下がっても良いということまで言い放つとは!
いったい、働き甲斐というものをどう考えているのだろうか?
介護だけでなく、医療や製造業の現場でも、きちんと良い仕事がしたい、と多くの労働者が願っているはず。それでも単価の切り下げや納期の問題で、手を抜くことも考えてしまう、ということは労働者なら経験したことだと思います。でも、それじゃいけない、と考え、じゃあ解決するためには何が必要か、を考えるものだと思います。
利用者の身になって考えることが必要なのはもちろんです。だからといって、介護労働者の要求を退けて良い理由にはなりません。
私が「誤解」していたのは確かでしょう。「労働者の立場に立ってくれるだろう」と誤解していました。(それにしても、まさか、ここまで労働者を敵視していたとは。)
労働者が職場で感じた矛盾から出てきた請願だと思います。労働者、経営者、利用者が手を携え、矛盾を解消することがますます必要だと、この議員の発言を聞いて思いました。
ついでに、この議員がなぜ東郷町議会に請願を出さなかったのかについても述べられていましたが、省略します。
他にも、「すでに政府が3%の介護報酬引き上げを表明している。まず成果を見極めるべき」(井俣議員)という反対討論がありました。だったら、「自分が賛成のサインをした意見書案も、成果を見極めてから提出すべきだったので、皆で話し合って取り下げました」とか説明しないと分かりにくいですよ。
この後、日本共産党の中川議員は、賛成討論で「労働運動にご理解を!」と、組合の活動家だった経験を持っている議員ならではの、味わい深い演説をされました。
- 「政府がやるから」というが、具体的に実感が得られるまで労働者は要求し続ける。
- 労働者が職場の実態を見て出した生の声が、この請願。
- 労働運動は自分の要求から出発して発展する。自分たちの給与だけでなく報酬全体を上げて欲しいという、いちばん控えめな要求しか出していない。
- 働いている人たちが職場を改善する。
特筆すべきは、民主党の橋本議員が賛成討論されたことでしょう。
橋本議員は、身内の介護でのご自身の体験を紹介しながら、「介護施設の人たちはどこでもよくやってくださった。いくらお金を払っても良いと思えるほどだった。最低限の要求の請願だと思うので採択を」と訴えられました。
更に、何を思ったか、「共産党が紹介しているから、という理由で反対するのはやめよう」とも述べられました。
いや、「共産党だから」云々は私には分かりません。誰に聞いても「共産党だから反対」とは言わないと思いますよ。でも、民主党の議員さんからこのような発言があったことは、うれしいです。
また、公明党の箕浦議員が討論の途中で「議論がいろいろ出たが、話し合ってみては」という理由から、継続審査の動議を出されました。私たち日本共産党は、話し合ってすり合わせることには賛成なので、動議に賛成しましたが、この動議は否決されました。
箕浦議員は、請願には反対されましたが、後で「丁々発止でやりあう内容ではなくて、党派を超えて考えるべき内容だから」と、動議を出した理由を話してくれました。
東郷町議会には「党利党略」はないと信じたい。だからこそ、話し合う姿勢が大切ではありませんか。
ここまで書いて、改めて「ほとんどの議員の反対理由は『ためにする議論』に過ぎない」という思いを強くしました。
もうひとつの請願も「ためにする議論」で否決されたと感じています。これからは、正面から政策をぶつけ合う議論をしませんか。
2008年の最後に長ったらしい記事になってしまいました。でも、今年の用事が終わった大晦日だからこそ書けたのだと思います。また、どうしても今年のうちに書いておきたかった記事でもあったので、ほっとしています。
2009年も議会で起きたことを私の目線で書くことを続けようと思います。新年も、どうかご注目を!
お願いいたします。