東郷町立保育園のうち、諸輪保育園と上城保育園(いずれも諸輪地区内)を廃止し、私立保育園を設置するという計画が、10月30日に全議員に送付された「東郷町保育所整備計画」で明らかになりました。
同計画は冒頭の「計画の目的」で、「平成17年度(2005年度)に建設した西武保育園を除き、建築後30~40数年が経過し、建替え又はリニューアルが必要」と老朽化への対応について言及しています。また「近年は、3歳未満児の入所希望の増加に対応できず待機児童が発生しています」と待機児童の解消について言及し、さらに乳児の受け入れのために調乳を衛生的に行うための施設の必要性についても述べています。
その上で「現状の施設では増築や改修する余地が限られているため、早急に大規模な施設改修や建替えを行う必要があります。また、町の規模から見てある程度の統廃合は必要と考え、一部施設の統廃合も視野に入れながら、存続施設を拡充することが必要となっています。」と、現状での対応の難しさを指摘し、保育園の統廃合に踏み込んだ言及をしています。
保育所の統廃合
同計画の「整備計画の基本方針」では、「保育所児童数の大幅な減少傾向は見られない見込みであることから、保育所の大幅な統廃合は困難です。しかし、諸輪保育園と上城保育園については、立地場所も非常に近く、また、上城保育園の定員が100人と町内で一番規模が小さいことや職員の定員適正化の推進と合わせ、上城保育園と諸輪保育園を統合することとします。」としています。
保育所の民営化計画
同計画の「民営化の考え方」では、「本町で考えられる民営化の手法」として、町が保育園の土地の取得と建物の建設をした上で民間事業者に貸し出し運営する方式(公設民間移管方式)と、町は土地の取得までをして建設と運営を民間に委ねる方式(民設民営方式)の2通りを示し、後者の問題点として民間の負担の大きさなどを挙げ、前者の公設民間移管方式を「最善」としています。
○職員配置の観点から
民営化を推進する理由として「職員定数の適正化」が挙げられていますが、その背景には町立保育園のうち指定管理者制度により民間法人が運営している西部保育園を除く7つの保育園の職員の半数を正職員ではなく臨時職員で占めていることが考えられます。こうした現状を、正職員の増員ではなく民営化によって打開しようという考えだと思われます。
○財政的な観点から
財政的な理由も挙げられています。私立の若葉保育園では児童1人当り約1万3000円/月の補助金を国と県から受けていますが、公立保育園にはこのような補助金はなく、私立保育園への補助金が今後どうなるかは分からないものの「現時点では大きなメリット」としています。
○民営化した保育園の担い手
計画は、民営化した保育園の担い手を「社会福祉法人又は学校法人に限定する」としています。なお、開園と同時に指定管理者制度が導入された西部保育園の運営は、社会福祉法人に委託されています。西部保育園についても「公設民間移管方式」への移行が検討されます。
各園の具体的な整備計画
同計画では、適正な改修を行い長寿命化を図り、築50年を迎える前に建替えるとしています。建替えでは3歳未満児の定員の増加を図るとしています。
施設が最も古い中部保育園(築41年)では一部の園舎を解体し新たに2階建て園舎を建設し、3歳未満児の待機の解消と障がい児保育の拡充を図るとしています。
保育室に余裕がある上城保育園(統廃合の対象)の保育室の一部を乳児室及び3歳未満児の幼児室に改修します。
和合保育園と南部保育園で3歳未満児の保育室の一部を改修し、3歳未満児の定員増加を図るとしています。
統廃合と民営化の時期など
諸輪保育園と上城保育園については、「平成28年度(2016年度)末を目処に(中略)廃園し、新設保育園に統合します。また、統合に当たっては、民営化(公設民間移管)を図ります。」としています。
新設保育園の開園予定は2017年度(平成29年度)で、2015年度(平成27年度)に用地取得、2016年度(平成28年度)に新築の計画です。
なお、現在、公営で運営されている保育園のうち、諸輪・上城両保育園以外については、民営化についての言及はありません。
保育所整備計画は、町立保育園の老朽化と3歳未満児の待機児童解消や障がい児保育の拡充を目的としています。これらの解消は急ぐ必要があります。
一方、「職員の定員適正化」や私立保育園にすることによる補助金獲得など、効率化の観点から統廃合や新設保育園の民営化が計画に盛り込まれています。
同計画では、現状の施設では対応は難しいとして、用地取得をした上での新設保育園の建設を構想していますが、具体的な建設費などはこれからです。
廃園されるとされる2つの保育園の用地の活用についても言及がありません。民営化の進め方なども含め、注視が必要です。