安倍首相が憲法解釈を勝手に変えて、集団的自衛権の容認を狙っていることに対し、国民の不安が高まっています。6月23日、東郷町議会で「集団的自衛権の行使容認について慎重審議を求める意見書」が全員一致で可決されました。
この意見書は保守系の井俣憲治議員が全議員に提案、所定の賛同者を得て23日の本会議に上程されました。井俣議員の提案に対し、別の保守系議員から「集団的自衛権の容認には賛成だが『慎重に進める』ことはその通りで、反対しにくい」といった意見が上がりました。私は、「慎重」であっても進めることには反対なので「慎重な対応」ならどうかと提案しました。
安倍首相の拙速な進め方については、憲法9条改正論者や集団的自衛権を容認する人たちからも批判の声が上がっています。こうした世論について考慮しなければならないと保守系議員たちも考えた結果、意見書提案につながったのではないかと私は思います。
この意見書案は委員会で付託されました。
私は安倍首相が集団的自衛権の必要性の説明に、個別自衛権で対応できることなどを持ち出しているなど、政府が正確に説明しようとしていないことや、解釈改憲で集団的自衛権を容認することについて憲法学者から批判が起きていることについて、井俣議員の認識を問いました。井俣議員は集団的自衛権についての議論の必要性を認めながらも、国民が理解しないまま進めることへの危惧を示しました。
その後、私は表題を「集団的自衛権の行使容認について慎重な対応を求める意見書」と改めるなどの修正動議を提出しましたが、賛成は私一人で否決されました。
原案は委員会と本会議でともに全員一致で可決されました。
なお、私、かどはら武志は全議員に対し「解釈改憲による集団的自衛権の行使容認に反対する意見書」を提案しましたが、どの議員の賛同も得られませんでした。
以下に、意見書の全文と私の本会議での賛成討論を紹介します。
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集団的自衛権の行使容認について慎重審議を求める意見書
集団的自衛権については、内閣総理大臣の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」も、近年の北朝鮮の動きや尖閣諸島周辺で東シナ海における領海侵犯など、日本を巡る環境が急速に変化を指摘した上で、「わが国の安全に重大な影響を及ぼす可能性」があるとき、限定的に集団的自衛権を行使することは許されるとの考え方を示した報告書を政府に提出し、それをもとに集団的自衛権の行使容認について閣議決定する方針で与党協議を進めている。
日本国憲法では第9条で「戦争の放棄」、「戦力の不保持」、「交戦権の否認」を定めており、これまで、政府においては、集団的自衛権を「国際法上保有するが、憲法上行使できない」との憲法解釈をしてきた。
安全保障のあり方の議論の必要性は当然のことではあるが、しかしながら性急な憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認は、国民生活へ大きな影響を及ぼすものであり、十分な意見交換や、全国で公聴会を開催するなど真摯な国民的議論の上での理解を得て結論を出すべきであると考える。
よって、国及び政府が進めている集団的自衛権の行使容認の問題の検討にあたっては、慎重に進められることを強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成26年6月23日
愛知県愛知郡東郷町議会
(提出先)衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 外務大臣 防衛大臣
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意見書案に対する、かどはら武志の賛成討論
議長のお許しがありましたので、私はただいま議題になっている意見書案第4号 集団的自衛権の行使容認について慎重審議を求める意見書に賛成の立場から討論いたします。
安倍首相の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が5月15日に発表した「報告書」は、集団的自衛権の行使を禁止してきた従来の政府解釈は「適当ではない」として、その容認を公然と求めるものとなっています。
集団的自衛権行使は、日本に対する武力攻撃がなくても、他国のために武力を行使するというもので、「海外での武力行使をしてはならない」という憲法上の歯止めを外すことにほかなりません。
従来、政府は、集団的自衛権については、「行使ができないのは憲法9条の制約である。わが国は自衛のための必要最小限度の武力行使しかできないのであり、集団的自衛権はその枠を超える」とし、憲法上許されないとしてきました。
日本が攻撃されていなくても武力で協力する集団的自衛権の行使容認は、日本を戦争への道に引き込むものです。憲法解釈の変更で違憲の集団的自衛権の行使を認めようというのは、まさに立憲主義の破壊です。
集団的自衛権は、アメリカのベトナム戦争、ソ連のアフガニスタン戦争などの口実として使われてきた。他国への軍事介入の論拠に使われてきた規定を持ち出して、憲法違反の武力行使を正当化するのは、大きな間違いと言わなければなりません。
日本国憲法は前文で、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないよう」と述べるとともに、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」「安全と生存を保持しようと決意した」としています。世界でも今、戦争ではなく平和的・外交的努力で問題を解決することが大きな流れとなっている。東南アジア諸国連合では、互恵と紛争の平和的な解決の枠組みづくりが大きく前進してきています。憲法を生かしてアジアと世界の平和に貢献する道をこそ、日本が進むべき道です。世論調査でも集団的自衛権行使に反対の声が賛成を上回り、日本弁護士会や歴代の内閣法制局長官もこれに反対する声を上げています。
一方、安倍内閣は、個別自衛権の行使の問題を集団的自衛権行使の実例として挙げるなど、嘘と欺瞞で集団的自衛権の容認に遮二無二進もうとしています。
私は国民の中にも集団的自衛権の行使を容認する意見があることは認識しています。私は憲法9条を堅持すべきだと考え、憲法9条がある限り、集団的自衛権は行使しえないと考えるものですが、憲法を変えるべきだとする憲法学者からも一内閣の決定で、改憲手続きを経ずに集団的自衛権行使を容認することは、いわば裏口入学だという批判が起こっています。
憲法観の違い、国防政策への考えの違いなど、立場の違いを乗り越えて、一内閣の憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使容認することは許されないという声が沸き起こっている今、東郷町議会がこの意見書を国会と政府に提出することには大いに意義があると考え、本意見書案に賛成するものです。