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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

池田信夫 『池田信夫blog』 「民主政と共和政」2013年10月06日10:39

2013年10月06日 | 抜き書き
(引用開始)

このように法の支配が徹底しているのが、アメリカの特徴だ。ナチに追われてアメリカに亡命したアーレントは、そこに大陸とは対照的な政治体制を見出した。フランス革命では、ルソーの「一般意志」が法に優越する主権者とされ、絶対君主の座に国民を置き換えようとしたのに対して、合衆国憲法には主権という言葉が出てこない。最高の権威をもつのは法であり、それを超える主権者はいないのだ。

彼らが権力の中心は人民にあるというローマ的な原理に忠実であったというとき、彼らは、それを一つの虚構や絶対者としてではなく、その権力が法によって行使され、法によって制限されている組織された集団という現実に動いている形で考えていたのである。共和政を民主政と区別するアメリカの革命的主張は、法と権力の根本的な分離に、そして両者の起源や正統化や適用範囲の違いに対するはっきりとした認識にもとづいている。(本書p.257、強調は引用者)

アーレントは、このように超越的な主体を排除し、非人格的な法の支配を徹底する共和政が、アメリカ革命を成功させた原因だとした。フランス革命が人々を圧政から解放して「自然権」としてのlibertyを取り戻すことを理想としたのに対して、最初の合衆国憲法には「人権」も「平等」も出てこない。そこではfreedomは人為的な法秩序であり、いかなる意味でも自然な権利ではないのだ。

日本は天皇制という特殊な制度をとっているためにこの点が見えにくいが、立憲君主政も法が君主に優越するする制度であり、アーレントもいうように近代国家の本質は民主政ではなく共和政にある。

(引用終わり)