書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

大島正一 『漢字伝来』

2018年02月28日 | 日本史
 出版社による紹介

 「第Ⅴ章」の114-115頁にまたがって記されているある指摘(後述)は、文末が「~とみることはできないだろうか」と、疑問形であるということは、著者によって初めて提起された、あるいは先行者がいるにしても、いまだ検討もしくは検証されていないということを意味するのであろう。宣命体の大文字と小文字の書き分けの区別(どこまでを大文字の裡として留め、どこからを、あるいは何を、小文字として追加・付記するか)は、そんなに等閑にしてよかるべかりし問題なのか。私にはちょっと理解しかねる物事の順序感覚である。

 このような書き分けができたのは、(宣命体の)書き手が文中における語の機能をはっきりと認識していたからにほかならない。そしてこの書き分けは、室町時代の末ごろに芽生え、江戸期になっておこなわれ始めたと説かれる品詞分類の、はるかにさかのぼる潜在的なさきがけとみることはできないだろうか。大・小字の書き分けは、この点でも興味あることがらと思われるのだが。

(岩波書店 2006年8月)