書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

野呂栄太郎 『日本資本主義発達史』全2冊

2018年08月24日 | 日本史
 「『プチ・帝国主義論』批判 高橋亀吉氏の緒論を駁す」。ほぼ40年振りに読む。谷沢永一大人が「野呂は、レーニンはこう言っているのに高橋亀吉は違うことを言う。だから間違いだ」一転ばりで、「なんと頭の悪い男か、自分でものを調べるという手続きも、自分で考える態度も全然ない」と評していたが(『読書有朋』)、40年経ったらますますそう思う。当時と今の時代の差を考えても、自分でものを考える能力がないという形容は鉄案で動かしがたい。その態度がないというのはその能力がないと判断されてもしかたがない。私は彼の親ではないのだから。

(岩波文庫 1983年11・12月)