書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

尾藤正英 『江戸時代とはなにか 日本史上の近世と近代』

2018年09月04日 | 日本史
 「天」の観念を生み、儒学の思想的権威が日本よりもはるかに強かった中国において、必ずしも日本の場合と同様な「公論」尊重の風潮が政治上に重要な役割を果たしたとはみられないことが注目される。とすれば私たちは、この風潮を生み出した要因を、日本近世の社会構造やそれを支えていた意識のなかに、探究することを試みなくてはならない。 (「Ⅲ 近代への展望」“明治維新と武士――「公論」の理念による維新像再構築の試み」本書188頁)

 藩や国家など組織の公共的な利害を、個人の私的な利害関係に優先させる武士的な価値観のあったことが、見逃されてはならない。(同、192頁)

(岩波書店 1992年12月第1刷 1993年5月第4刷)