書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

E.ブローダ著 市井三郎/恒藤俊彦訳 『ボルツマン 現代科学・哲学のパイオニア』

2012年03月21日 | 伝記
 ルートヴィッヒ・ボルツマン(1844 - 1906)。ブラウン運動の関係者としてその伝記を確かめる。彼は原子論者だったが、彼がその人生のほとんどを生きた19世紀には、原子の存在はまだ視認できていなかった。よって実証できないものを実在すると認めることはできないという陣営も強かった。オストワルドやマッハがその代表的存在である。ボルツマンはもともと鬱病の気味があったらしいが、オストワルドやマッハらとの終わりのない論争に疲れ果て(どちらも確証がないのだからそれは終わらないだろう)、それが原因で自殺してしまったとされる。

(みすず書房 1957年11月)