書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

歸山則之 『生きている戦犯 金井貞直の「認罪」』

2011年06月11日 | 日本史
 撫順戦犯管理所での思想改造は、洗脳ではなかった。では強制(反対にいえば日本側の迎合)かといえば、それもちょっと違う。
 あれは籠絡(ひとたらし)だったのだ。
 籠絡ならば、思想教育が先か坦白・認罪が先かといったような問題――私が長い間拘泥していた――は、重要ではなくなる。それは単なる手順の問題にすぎないからだ。
 著者の立場や著者が聞き書きを取った金井氏の意見とは異なるが、この書を読んでお二方には申し訳ないながら、そういう結論に達した。

(芙蓉書房出版 2009年11月)