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書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

五十嵐一 『東方の医と知 イブン・スィーナー研究』

2015年01月07日 | 地域研究
 イブン・スィーナーは、病気の原因を分析・探究するにあたり、アリストテレスの四原因説に厳密に則っている(同書「四体液の四原因論」本書167-168頁)。さらに彼は先達ガレーノスを襲い、起動因から衝撃因を、質料因から先在因と共働因(介在因)の概念を導き出している(同「病の近接因」本書178-179頁。および「病と結縁〔けちえん〕する」182-183頁)。なお五十嵐氏によれば、後の二つは今日の病理学でいうところの素因に近い由(179頁)。

(講談社 1989年11月)

鈴木宏昭 『類似と思考』

2015年01月07日 | 人文科学
 著者は類似(=類推)を、思考(=推論=帰納+演繹)同様、人間の認知機能の一つであり、またこれら類推・帰納・演繹のそれぞれが「記憶」「検索と想起」「カテゴリー化」「例示化」といったより基礎的な認知プロセスの「ある特殊な形の融合」ではないかと説く(「はじめに」viii頁)。類推とは「知りたいこと,あるいはよく知らないことをよく知っていることにたとえて考えることを指す」(「第2章 類推とは」13頁)。つまりまったく同じとは必ずしもいえないが、「比喩」とよく似た心的活動である由。

(共立出版 1996年12月)