『医学典範』収録(五十嵐一訳注、佐藤達夫校閲)。伊東俊太郎による序説「アラビア科学とイブン・スィーナー」、五十嵐一による解説「イブン・スィーナー」付き。
冒頭すぐ、アリストテレスの「四原因説」が全体の基本的視座――医学に限らず学問全般の目的は諸原因の探究でありその知識の獲得であるという――として出てくる(「第一教則」「第二章 医学の諸課題について」)。そこから見るかぎり、イブン・スィーナーは、原因を、主として目的因としてとらえているようである。こんにちでは原因とは作用因(起動因・動力因)のことであるという理解が一般的である。因果関係の原因など、まさにそれだ。この彼我の違いについて訳注、序説、解説のいずれにも説明がないが、私なりの推測としては、この世のすべてを作ったのは神(アッラー)であり、それしかなく、さらにはそのことを疑える余地がなかったからであろう。すべてが神の御業ということであるなら、これでは力学が発達するはずはないと思える。
(朝日新聞社 1981年11月)
冒頭すぐ、アリストテレスの「四原因説」が全体の基本的視座――医学に限らず学問全般の目的は諸原因の探究でありその知識の獲得であるという――として出てくる(「第一教則」「第二章 医学の諸課題について」)。そこから見るかぎり、イブン・スィーナーは、原因を、主として目的因としてとらえているようである。こんにちでは原因とは作用因(起動因・動力因)のことであるという理解が一般的である。因果関係の原因など、まさにそれだ。この彼我の違いについて訳注、序説、解説のいずれにも説明がないが、私なりの推測としては、この世のすべてを作ったのは神(アッラー)であり、それしかなく、さらにはそのことを疑える余地がなかったからであろう。すべてが神の御業ということであるなら、これでは力学が発達するはずはないと思える。
(朝日新聞社 1981年11月)