書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

「チベットNOW@ルンタ:これまで発見された焼身抗議者13人の遺書」を読んで

2012年12月06日 | 地域研究
 『チベットNOW@ルンタ』
 〈http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51771721.html

 そのうち、「2)2012年1月8日に焼身・死亡したトゥルク・ソナム・ワンギェル(ソバ・リンポチェ)(18番)の録音遺言」からの一節から。

 この行為は自分1人のためになすのではなく、名誉のためになすのでもない、清浄なる思いにより、今生最大の勇気を持って、(ブッダのように、子トラたちを救うために飢えた)雌トラに身を捧げるようになすのだ。

 薩埵王子の「捨身飼虎」説話である。ということはその出所は『ジャータカ』である。
 引用はもちろんチベット語の仏典からであろう。同じ説話は、漢訳仏典でも、『金光明経』その他に出てくる(薩埵王子・捨身飼虎の訳はそこからだ)。だがこれらの亡くなったチベットの人たちの郷土愛、同胞愛に基づく行動が、そちらを読んでのこととは考えにくい。
 ベトナム戦争時のベトナム僧の焼身自殺は漢訳『法華経』の焼身供養にもとづくものではないかというが、両者いろいろな意味で対蹠的である。ある次元においては比較の対象にもなりえるだろう。