書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

ウィキペディア「寒川鼠骨」項を読む

2012年12月07日 | 文学
 (2012年09月21日「まつばらとうる 『「子規唖然」「虚子憮然」―『仰臥漫録』自筆稿本始末記』」より続き)

 ここには参考文献として名が挙がっていないが、まつばらとうる『隣の墓』(文芸社 2001年9月)と鼠骨の人と行蔵について記述と評価がひどくことなる。正反対といってもいい。
 『隣の墓』における鼠骨は、子規庵を私物化し(守りまた維持に努めたのは自分と家族が住んでいたから)、子規庵保存会の会計を不明朗に処理し、庵に残されていた子規の遺墨や直筆原稿を己と家族の生活のために密かに売却した。正岡律の死後、そのことに気づいた忠三郎と裁判沙汰になっている。
 『隣の墓』は著者による調査と事実発掘のノンフィクションという触れ込みである。だとしたら、どちらかが間違っているのであろう。少なくともウィキペディアは、いまからでも、鼠骨自身とどちらかといえば鼠骨側だった柴田宵曲の著作だけでなく、それ以外の資料にも拠るべきではないか。安倍能成の証言など。