くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「今日の放課後、短歌部へ!」千葉聡

2014-07-20 04:49:49 | 詩歌
 歯医者の待合室。
 いや、わたしではなくて、息子の矯正です。最近、やたらと混むようになったので、開始の一時間前にきたのに、もう二時間たちそうです。
 読み終わってしまいました。千葉聡「今日の放課後、短歌部へ!」(角川学芸出版)。てっきり部活ものだと思って買ったんですが、千葉聡さん自身が歌人として周囲の人々を感化していく感じ。うまく表現できなくて、もどかしいのですが。
 千葉さんは、横浜の高校で国語を教えています。年齢も近いし、すごくよくわかる。あるある、と思いながら一気に読みました。
 転勤した戸塚高校は、あの「夜回り先生」も在籍していた学校で、知名度のある先生方が多かったのだそうです。
 それまで中学校の教員だった千葉さんは、新しい環境のなかで悪戦苦闘していきます。私語が多かったり、授業に集中させるために短歌を紹介したり。高校生たちとのやりとりも、とてもさわやか。
 おそらくここにはあっさりと描かれていても、教壇やバスケットコートではもっと悔しい思いをされたのではないかと思うのです。鬼の指導者カオリ先生、くっきりしていてかっこいいけど、わたしが千葉さんの立場だったら相当つらい気がする(笑)。
 短歌が折り込まれているんですが、実際に学校にいないとわからないなと思うような感性の作品がおもしろいと思いました。
   全員でひとつのおおきなかぶを抜き続けるようなスクールデイズ
   二年「古典」助動詞テストで五十点とれなかった子は追試をします
   反省会「どんなにバスケがうまくてもハートのない奴、試合に出るな」
 この歌、すっごくよくわかるんですけど! でも、穂村さん、東さんとの座談会では、今では学校内だけの価値観だと言われており、複雑な気持ちです。
 学校って、多分外の人が思うよりも「ハートのない」状態がはっきりしているのではないかしら。評価されるのは実績だと穂村さんはおっしゃいますが、思春期の子のそういう状態は態度に出てきてしまうといいますか。うーん、わたしが捉えている感じと穂村さんの印象は、多分少しずれがあるんでしょうね。
 実際にその生徒は「ハートがない」のではなくて、バスケットの練習中にやる気ない行動をしてしまったのでしょう。カオリ先生はそれを叱った。この言葉で彼に気づいてほしい、気づくはずだと思うからです。
 中学校生活を描いた作品も読みたいところですね。
 わたしはこの本、すごく助けられた気持ちになりました。