くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ハケンアニメ!」辻村深月

2015-03-17 21:29:22 | 文芸・エンターテイメント
 店頭のチラシで、この作品の特別短編を読みました。(特装版のカバー裏に入っているものと同じです)
 そうしたら、猛烈にこの本が読みたくなって、図書館から借りてきました。
 辻村深月「ハケンアニメ!」(マガジンハウス)。ハケンとは、覇権を競うという意味から出た言葉で、そのシーズンのトップを獲得することだそうです。数字でいえばDVDの売り上げですね。
 物語は、天才的なアニメ監督王子千晴を軸とした三人の女性が描かれます。
 王子に新作「運命戦線リデルライト」(通称「リデル」)を作らせるプロデューサー有科香屋子、ライバル作品「サウンドバック 奏の石」(通称「サバク」)を撮る若手監督斎藤瞳、どちらの作品にも参加している有能なアニメーター並澤和奈。
 新潟県の選永市を重要な舞台にしながら、アニメに関わっていく人々の姿が描かれるお仕事小説です。

 「どうして、アニメ業界に入ったんですか。/と聞かれることがある」 章の書き出しは同じです。
 どの章もドキドキしておもしろいんです。
 中でもお勧めは、作中アニメのあらすじ。「リデル」も「サバク」もすごい気になる!
 毎週一年ずつ成長していくキャラクター。しかも、魔法少女! しかもバイク! ステッキじゃないじゃん! 女の子たちも超合金を買うようになるのかしら?
 片や、毎週ロボット戦争の裏側で、ひとりの少女から音が失われていく悲劇。地球を守ることで誰かが犠牲になるのは、仕方がないことなのか。瞳が選んだ結末には賛否両論あったとのことですが、わたしは中盤のストーリーを読んだ時点で、彼女に音が戻ることはないだろうと思っていました。そういう予定調和の物語を、辻村深月は選ばない。
 
 「サバク」のロケハンに使われた選永市は、それを観光に活用できないかとスタンプラリーを企画します。担当の宗森くんがいい奴なんですよ! お手伝いに駆り出された和奈は、ちょっといらいらしてしまいますが、彼のひたむきさに、自分が愚痴ばかり言っていたことを恥ずかしくなる。
 そして、地元の祭りに絡んだ企画が始動し……。
 王子がどう関わってくるかが見どころですよ。
 で、わたしは「リデル」のキャッチコピー「生きろ。君を絶望させられるのは、世界で君ひとりだけ」が好きですね。
 ところで、チラシを読み直そうと思っていたのに見つかりません……。うう……っ。