魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

クロダラ

2017年08月06日 21時12分13秒 | 魚紹介

本日も変わった魚との出会いがありました。タラ目・チゴダラ科・イトヒキダラ属のクロダラ。

最初画像を見たときは「イソアイナメ」と思い、これでも大喜びであったのだが、届いた魚をよく見ると2本の細長い腹鰭があったのでした。

このような腹鰭は、イトヒキダラではありえない。腹鰭がこのように糸状に伸び2軟条という特徴をもつのは日本産としてはイトヒキダラ属のみの特徴です(イトヒキダラ属とされることが多いヒメダラを含む。ヒメダラ属を認める場合、ヒメダラ属もこれにあてはまる)。ほかの多くの属の種は胸鰭が短いか、長い場合でも5軟条はあります。イソアイナメでは腹鰭が9軟条あります。

イトヒキダラやヒメダラと違うところは、第1背鰭が高くなりその第1軟条は糸状に長くのびているところです。ヒメダラやイトヒキダラの第1背鰭は小さく背鰭軟条も糸状には伸びていません。ほかに軟条が糸状に伸びる種としてはバラチゴダラなどがいますが、この種は腹鰭の軟条の様子により、イトヒキダラ属と見分けることができます。

ほかの日本産イトヒキダラ属の魚ではパラオイトヒキダラに近いといわれるクロダラ。パラオイトヒキダラとは、吻部の有鱗域の形状が若干ことなっています。パラオイトヒキダラは有鱗域の先端が二つに分かれるような形になり、そうならない本種との見分けは容易です。

クロダラは水深1200m以浅の深海に生息する深海魚です。九州-パラオ海嶺に分布するとされましたが、和歌山や神奈川県横浜で採集されています。この個体は釣りで採集されたもので胃が反転し飛び出しそうです。また腹鰭の長さもパラオイトヒキダラとは大きく異なっています。

イトヒキダラの仲間は10数種が三大洋の深海に生息しています。日本産はヒメダラを含めると4種です。昔の図鑑ではこのほかホテイイトヒキダラLaemonema filodorsaleというのが掲載されていましたが、最近はこれをLaemonema robustrumやL. modestumと同種とみなしていることがおおく、和名をクロダラとしています。ただしこれについては個人的には納得していません。FishbaseのL. robustumとされている写真(マデイラ産)は腹鰭が長く臀鰭にまで達しているのですが、魚類検索によればクロダラは腹鰭が臀鰭どころか肛門にも届かないので別種と思われます。この個体は臀鰭の形状なども含め、昔の図鑑に従えばホテイイトヒキダラということになります。

最後に、チゴダラとクロダラの見分け方を。今回のクロダラは長崎県の石田拓治さんより。いつもありがとうございます。

 


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