昨日は2月14日でしたが、バレンタインデーのチョコレートはもらえませんでした。
今回ご紹介するのは以前紹介していたと思いきや、実は紹介できていなかったニシン目の魚。オキイワシという魚である。ニシン科ではなく、オキイワシ科という科で、この科には2種しか含まれていない。日本に生息するのはオキイワシのみであるが、もう1種ホワイトフィンウルフヘリングもインドー西太平洋の暖かい海に生息しているので、そのうち日本からも採集されるのでないかと思われる。
口を閉じたオキイワシ
オキイワシの歯
オキイワシの英語名はDorab wolf-herringというが、その名前の通りオオカミのような牙が特徴。この牙で小魚を食すのだろう。Dorabというのはおそらく本種の基産地である紅海地域での呼び名(アラビア語)ではなかろうか。中国語では西刀魚、台湾では寶刀魚というらしく、古くは日本でも「サイトウ」と呼ばれていた。子供向けの本でも「サイトウ」「オオクチサイトウ」はお馴染みであったため(例:学研の図鑑)、それで覚えたという方も多いのではなかろうか。阿部宗明博士の「原色魚類検索図鑑」の古い版(昭和50年の第5版)では「ふとさいとう」として紹介されている。なおそこでは「オオクチサイトウともいう」とされていて、オキイワシ(サイトウ)はフトサイトウと比べるとやや大きく脊椎骨数は72~75でフトサイトウの67~73(普通70)より多いという特徴がある。しかしながらフトサイトウの学名Chirocontrus hypselosoma(属学名はChirocentrusのスペルミスか?)は現在ではオキイワシのシノニムとされているようだ。
背鰭は一部が黒い。臀鰭は黒い個体もいるがこの個体は黒くない。この特徴によりホワイトフィンウルフヘリングと見分けることができる。臀鰭軟条数は26-32であり、ヒラの仲間と同じくらい多いようである。
オキイワシは日本ではあまり食されていないが、東南アジアでは市場にも出るという。また釣りの対象魚として人気がある。今回はニシン科魚類らしく煮つけでいただく。やはりニシン目の魚ということで小骨は多かったが味自体は美味であった。ただしこの個体はかなり小さいものなので、大きいものはもっと美味しく、もっと食しやすいであろう。
分布域は北海道、若狭湾、琉球列島であるが、基本的に熱帯性である。この個体は鹿児島県産であり、鹿児島県の田中水産社長 田中積さんより。いつもありがとうございます。