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「自閉っ子、こういう風にできてます!」

2007-08-04 16:35:04 | 本や言葉の紹介
 びっくりしました、「自閉っ子、こういう風にできてます!」(ニキ・リンコ 藤家寛子 花風社)。

 ニキ・リンコさんと藤家寛子さんは、おとなになってからアスペルガー症候群(知的面、言語面での遅れを伴わない自閉スペクトラム)であることがわかり、自分の体験を語ってくれている貴重な存在です。この二人に、定型発達(いわゆる健常者のこと)の編集者で花風社代表取締役である浅見淳子さんが加わった対談集がこの本。

 アスペルガー症候群の人は、定型発達者にはまず理解できない感覚を持っているということがよくわかりました。


藤家 雨は痛いじゃないですか。当たると。傘さしていても、はみ出た部分に雨が当たると一つの毛穴に針が何本も刺さるように痛くありません?
浅見 痛くありません。
ニキ 痛くない。
藤家 えっ!? みなさんは雨が痛くないんですか?
ニキ 私は雨は痛くないですよ。でも扇風機の風が痛いです。
浅見 はぁ?
ニキ それも、どうやら毛穴の問題らしいんです。この年(三十代後半)になって、先日初めて母に「扇風機の風が痛い」っていったら「変わってるね」って言われました。それで、なんだみんな痛くないのか、と。
浅見 毛穴に感覚過敏があるっていうことなんでしょうか?
藤家 それ、絶対にあると思います。だから、髪を切るとかも、「神経ないんだから、痛くないって」と言われても、毛穴から出てんだから、切るときに触られると痛いんだよっっ(怒)とか、爪も、普通の人だったらまだ切らない長さで、切ります長くなってくると、パツンってやるときに、指に負担が大きいので。でもこんなとき「痛い」とか言うのを、信じてもらえませんでした。痛い理由がわからなかったので、だから、日常生活でかなり泣きっぱなしだったと思います。
浅見 痛みの個性はそれぞれですが、私たち定型発達の人間には想像がつかない痛覚を抱えていることはよくわかりました。自閉スペクトラムのお子さんの療育に携わる方たちには、
・「想像できない場面で痛みを感じているかもしれない」
・「しかもその痛みの感じ方にはそれぞれ個性がある」
と覚えておいてほしいですね。


ニキ マニュアル作業がとにかく多いんですよ。
浅見 そうみたいですね。ニキさんが主宰していらっしゃる「自閉連邦在地球領事館付属図書館」(http://homepage3.nifty.com/unifedaut/)の日記によく「嚥下」の問題を書いているじゃないですか。ときどきつばの飲みこみかたを忘れる、とか。
ニキ 思い出せなくなることがあります。あと寝てるときに誤嚥して、そうすると熱が出たりします。
こういうことがオートマティックにできることのほうが不思議です。


ニキ 不思議なほど知られていないです。自閉者につきまとう身体機能の不具合については。
藤家 私も講演に歩いてみて、自閉のお子さんを持つお母さんや養護学校の先生など、「知っているだろう」と思いこんでいた方たちが精神面とか社会面ばかりに気をとられて、身体機能のことをあまり認識していないので驚きました。
浅見 でも、すべてマニュアル操作だとしたら、人生大変ですよね。
ニキ 自閉はうつとか引きこもりと混同されることが多いのですが、それに私自身、「心の病気」じゃなくて「先天的な脳のつくりの違い」だっていうことの啓蒙には尽力したいと思ってかとどう続けてるわけですが、その私がやっぱりうつや引きこもりを経験しているんです。
浅見 身体機能から発している問題は多いということですね。でもご本人たちが苦しんでいるのに、どうしてこれまで身体機能の問題があまり注目されてこなかったんでしょうか。
ニキ 定型発達の人には想像しにくいというのがひとつ。それに私たちもこの身体がふつうだと思っていたので、定型発達の人たちがそれほど楽をしているとは想像していませんでした。



 とにかくびっくりしました。想像しにくいことが山盛りの本でした。