「名古屋円頓寺商店街の奇跡」山口あゆみ著 講談社α文庫
円頓寺商店街は3年前、経産局の紹介でお伺いした。西アサヒ(現なごのや)の田尾さんは、奥さんが三重県出身ということで、超多忙にもかかわらず、気さくに対応していただいた。古さ(親しみ)の中に、新しさ(若さ)が徐々に入りつつあるアーケード商店街だった。当時、田尾さんの周りでは次ぎ次ぎと仕掛けが造られているなといった感がした。商店街の奇跡は、ここに1冊の本として結実した感がある。
円頓寺のこれからを考えるとき、いつも念頭に置いていたこと。
・老舗 今まで長くここで商売をしてきた店
・名物 商品だけでなく、名物商店主も含む
・街並み 歴史ある街並みだけでなく「残したい」と感じる街並み
・お祭り この街ならではの祭りで人が集まる
田尾さんの店 西アサヒ
イベントパリ祭は、徐々に充実させていくのではなく、一回目から「これ本物だね」と思わせるお祭りにしたかった。出店してもらう店は公募ではなく「これぞ」というお店にこちらから声をかけていった。
田尾さんのところのサンドイッチ
街の活性化について田尾さんは語る。「いい店をつくるとか、いいメニューを開発するとか、そういう具体的な活動はあっても“街づくり”という行動って実はないんですね。お客さんが明日行きたい店、行きたくなるサービスをどうやってできるかという、ひとつひとつの地道な積み重ねしかできないなと思います」。
堀川沿いにある風情のある飲食店
店舗でも、祭りでも、アーケードの改修でもそうですが、どういう姿になるのがいいのか、そのビジョンを描いておかないと、ただ『つくりました』になってしまう。例えば、アーケード改修にあたっては、改修されたアーケードの下でどんなことができたらいいのか、どんなふうに資金を回収していくのか、そうしたビジョンがあってこそ、じゃあどういう改修をすればいいのかが見えてくるんです。
一店舗、一店舗のオリジナリティを大切にし、今まで続いてきた店の個性、店主の個性を生かしながら街づくりをしたことが、結果的に円頓寺商店街全体の価値と魅力を高めた。