認知症の診察をしてもらった。
その病院では、神経内科が認知症を診ていた。
「どのような理由から、診察を受ける気持ちになったのですか?」
それが最初の質問だった。
「ここのところ、物忘れが激しいように思いましたので・・・」 私は正直に答えた。
「誰かにそのことを言われたのですか?」
「ええ、いつも家内には言われています。自分でも、そのように思いますし……」
「今日は奥さんに言われてきたのですね?」
「いいえ、家内には内緒できました!」 まさかこんなこと、カミさんに言えるものか!
まずはそのようなヤリトリから始まった。
担当の医師は、私の顔を凝視しながら、矢継ぎ早やに質問を繰り出してきた。
「今日は何年何月何日ですか?」、「何曜日ですか?」、「100引く7は幾つですか?」、「さらにそこから7を引いたら幾つになりますか?]、などなど。
いきなりのことだったので、私はドギマギした。
面接試験の気分さながら、ひどく緊張をして回答した。
小道具を使っての質問もあった。
あのような緊張は、久しぶりのことであった。
やがて医師から、次のような話があった。
「心配ありませんね。30点満点の30点です。20点以下なら認知症を疑いますが、あなたにはその心配、まったくありません」
医師は、「まったく」という点を強調してくれた。
ガンの経過観察をはじめ、目の検査、自動車の高齢者講習、免許更新、認知症検査・・・。
おおよそのチェックが済んだ。私はしばらく死なないことに決めた。
だから、車を取り替えた。ギアチェンジの具体的な一歩のつもりだ。
年齢を考えれば、免許証を返上する人もいる。無謀と思われるかもしれない。そこには、私の密かな覚悟があった。使命感かもしれない。
先の日曜日は「大安」であった。新しい車が入ってきた。
過信は厳に慎まなければならない。
高齢者と言えば、走っているだけで迷惑がられるのだから……。
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