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【訃報】斑目春樹・元原子力安全委員会委員長死去/斑目氏も事情聴取受けた刑事裁判の行方は……?

2022-11-30 21:36:40 | 原発問題/一般
班目春樹さん死去 福島事故時の原子力安全委員会委員長(朝日)

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 東京電力福島第一原発で事故が起きた際に国の原子力安全委員会委員長だった班目春樹(まだらめ・はるき)さんが22日、脳梗塞(こうそく)のため死去した。74歳だった。葬儀は近親者で営まれた。喪主は妻千恵子さん。

 専門は原子力工学。東京大学大学院工学系研究科修士課程を修了後、東京芝浦電気(現・東芝)に入社。東大講師、同教授などを歴任した。

 2010年4月に同委員長に就任し、12年9月に同委員会が廃止されるまで委員長を務めた。

 原発事故時には首相官邸に詰め、菅直人首相(当時)に事故対策を助言。その後は、事故を防げなかった責任も問われた。12年の国会事故調査委員会の聴取に対し、過酷事故の想定をしなかったことを「大変な間違いだった」などと振り返った。
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すでに10日近く経ってしまったが、斑目春樹氏が11月22日に死去した。福島第1原発事故当時の原子力安全委員会委員長。爆発を起こした原子炉の今後の見通しなどを記者から質問されても何も答えられなかったことは今も忘れない。「頭を抱える」という日本語はこういうときのためにあるのかと再認識するほど、文字通りテレビカメラの前で頭を抱えている様子が報道された。その様子とともに「デタラメハルキ」という不名誉なあだ名まで奉られ、無責任な原子力ムラの象徴とされた時期もあった。

2005年当時、ヘラヘラ笑いながら「原発って、儲かってるらしいね」などと発言している場面が原発事故直後、映像として掘り起こされた。原子力ムラの中心で推進する立場でありながら「安心なんかできるわけないじゃないですか、あんな不気味なもの」などと発言する様子は原発事故直後に大きな批判を浴びた。

記事にもあるように、原子力安全委員会は2012年9月に廃止されたため、最後の原子力安全委員長となった。事故後、「原発を推進・保護する部署と規制・チェックのための部署が同じ経産省に属していていいのか」との批判が高まり、環境省の下に原子力規制委員会(規制委)が置かれることになったからだ。

あれから11年経ち、岸田政権の下でエネルギー危機を口実に原発再稼働・新増設までも行われようとしている。当ブログが断固反対なのは言うまでもない。とりわけ、経産省が画策する「原発が停止していた期間を運転年数から除外」する案(関連記事:「停止期間除外」を大筋了承 原発60年超運転へ―建て替えに次世代原発・経産省会議)は、いくつか提案された中でも最悪のものだ。

なぜなら、現在、規制委の審査が遅れている原発は、問題があるから遅れているか、電力政策上重要でない(出力が小さいなどの理由)から遅れているかのどちらかだからだ。このような状況で、この案がそのまま法律になった場合、問題がある原発ほど建設から長期間運転できることになる。私が原発推進派であったとしても言語道断と言わなければならないほどひどいものだ。

斑目氏の過去の発言を発掘した動画では、「10倍のお金で納得して得られるものと、失うものがあります」という動画投稿者からのメッセージで締めくくられている。原子力施設がないと生きられないから仕方ないではなく、原子力以外で生きる道を地域を挙げて模索することが必要だ。エネルギーがないから原子力復活も仕方がないではなく、足りないなら再生エネルギーなど他の電源による発電量を増やすか、節電するかのどちらかしかない。11年経っても、問われている課題に変わりはない。

大失言!【原発儲かる】原子力安全委員長 【最後は金】2005年班目


なお、最後に、斑目氏について重要なことを述べておきたい。実は、当ブログも告訴人の1人として関わっている「福島原発告訴団」による刑事告訴を受け、検察は2013年、斑目氏を任意で事情聴取している(参考:「検察当局が班目原子力安全委元委員長から任意で事情聴取」(一般社団法人環境金融研究機構)から)。「取り調べかと思うほど、このときの事情聴取は厳しいものだった」と、聴取対象となった多くの参考人が話しているという情報が、当ブログ管理人にも伝わってきた。密室での事情聴取ゆえ、斑目氏がどのような供述をしたのか、当ブログ管理人には知る由もないが、少しでもこの原発事故の真相究明と再発防止につながるような供述をしてくれたものと信じたい。

結局、刑事告訴の後、福島地検は事件を東京地検に移送し不起訴決定。2014年7月、検察審査会による「起訴相当」議決を受けた再捜査でも再び検察は不起訴としたが、2015年7月、東京第1検察審査会は再び「起訴相当」と議決、原発事故は東電経営陣3人が強制起訴され初めて刑事事件として裁かれることになった。2019年9月の東京地裁判決で、3経営陣に無罪判決が言い渡された後、検察官役の指定弁護士が東京高裁に控訴し、現在も裁判が続いていることは、繰り返し、当ブログで報じてきたとおりである。

東京地裁で裁判が始まる前に行われた公判前整理手続きには、斑目氏の供述調書も証拠として提出されている。福島原発刑事訴訟支援団は、現在、1審判決の破棄を求めて東京高裁に申し立てを行っているが、残念ながら却下された。このまま行けば、年明け1月18日に、東京高裁で控訴審判決が言い渡されることになる。

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