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人間の普遍性について今さらながら

2008-09-25 16:46:25 | 読書ノート
ドナルド・E.ブラウン『ヒューマン・ユニバーサルズ:文化相対主義から普遍性の認識へ』鈴木光太郎, 中村潔訳, 新曜社, 2002.

 文化人類学分野の書籍で、専門書と一般向け書籍の中間にある本。著者は、人類には“文化に関わらず”普遍的な特徴──物理的なものだけでなく、精神的な面でも──がある、と主張する。

 しかし、なぜそんな“今では当たり前”のことをわざわざ言わなければならないのか? その重要性は20世紀の文系の学問の潮流を掴んでいないとよくわからないかもしれない。本書は、20世紀の人類学でどれほど文化相対主義が強固だったかを説いている(解説も簡単な文化人類学史でありがたい)ので、その意義についてわかりにくいということは無いだろう。

 とはいえ、原書は1991年発行でやや古い。今この話題に関心を持った方には、ピンカーの『人間の本性を考える』1)の方を薦めたい。文化人類学だけでなく、ジェンダー・フェミニズムなど20世紀の文系の思考を支配した考え方全般をやり玉に挙げている。ただし、ピンカーの方は話の進め方が上手すぎて読者は何か丸め込まれた気分になる。が、本書の書き方は慎重であり・落ち着いて論旨を検証できる。

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1) スティーヴン・ピンカー『人間の本性を考える:心は空白の石板か』山下篤子訳, NHKブックス, 2004.
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