29Lib 分館

図書館・情報学関連の雑記、読書ノート、音楽ノート、日常生活の愚痴など。

情報検索の最新情報を伝える入門書

2015-11-24 10:20:20 | 読書ノート
高野明彦監修『検索の新地平:集める、探す、見つける、眺める / 角川インターネット講座8』KADOKAWA, 2015.

  現状の情報検索技術およびその思想を伝える論考集。検索とは何かという話から、テキスト検索、画像・映像検索、GPSや時刻への情報の紐づけ、セマンティックウェブ、連想検索などがトピックとなっている。親切に基本概念が説明され、難易度も各論考同じレベルに調整されており、このシリーズ(参考1 / 2)にありがちな、各論考毎に読者に求める知識がバラバラで説明が難しすぎたり易しすぎたりということがない。執筆者のほとんどは国立情報学研究所(NII)所属。Webcat Plusや新書マップを提供してくれている人たちである。

  図書館情報学研究者としては、執筆者の経歴をみながら「情報検索はもう完全に工学系出身者の領域なんだな」という感慨を持った。当たり前だと思われるかもしれない。しかしながら、1990年代までは情報検索は図書館情報学分野──教育学部や文学部に置かれていることが多い──の主要な下位領域だった。大学院ではパンチカードを使った黎明期の話を講義で聞いたものだ。けれども、今では僕のような文系学部出身者にはついていけないぐらい高度なものになっている。今でも下位領域だと言われればそうなのだが、現在の図書館情報学領域における情報検索研究者はものすごく数学とプログラミングが出来るというイメージで、普段は学生に司書資格課程を教えているだろうその他の図書館情報学研究者らとはまた異なっている。

  雑念のほうが長くなってしまった。手堅くまとまっており、情報検索分野の良い入門書である。司書資格課程で「情報サービス演習」を担当するならば読んでおいたほうがよい。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 若い頃に楽しめなかった作品... | トップ | 佇まいは質素だが、よく聴く... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

読書ノート」カテゴリの最新記事