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謎の新興レーベルによるピアノトリオ快作

2020-06-12 18:00:35 | 音盤ノート
Marc Copland "And I Love Her" Illusions Mirage, 2019.

  ジャズ。コープランド以下、ドリュー・グラス(b)とジョーイ・バロン(d)というピアノトリオ。彼らは2017年8月に亡くなったジョン・アバクロンビーのカルテット(参考)のメンバーで、録音時期もレーベルのサイトにあるライナーノーツによれは彼の死の直後のようだ。

  収録の9曲中4曲はメンバーのオリジナルで、残りはカバー。コープランドの本領は、ソロではなくて、原曲の印象をがらりと変えるリハーモナイズにある。このアルバムでもカバー曲のほうが面白い。特に最初の二曲、コルトレーンの荒々しい演奏で知られる’Afro Blue’と、ハービー・ハンコックによるファンキーな曲'Cantaloupe Island'は、静謐ながら緊張感のある演奏となっていて引き込まれる。アルバムタイトルとなっているビートルズの'And I Love Her'は、原曲の雰囲気を残しつつ、メロディをとりまく和音を幽玄で美しいものに変えている。残りの二曲、コール・ポーターの’You Do Something To Me’は筆者に原曲の印象がなく、アバクロによる'Love Letter'はこれが最初のレコ―ディングで比較するものがない。オリジナル曲だとコープランドによる'Day And Night'が盛り上がる。全曲を通じて、バロンのドラムが大胆になる瞬間もあってとてもスリリングである。

  ここ数年、飽きずに聴けるようなジャズの新譜にしらばく出会っていなかったが、これは久々のツボだった。耽美派ピアノトリオ好きならば気に入るのではないだろうか。なお、発行元のllusions Mirageというのは設立されたばかりのレーベルらしく、今のところ作品はこのアルバムだけ。公式サイト(参考)を見ても情報は少なく、設立者が誰かわからない。僕が所有しているのは不良品のようで、パッケージには収録時間が65:50とクレジットされているのに、CDプレーヤーでは67:06と表示され、最後の曲は決まった箇所で音飛びがある。このレーベルは、あんまり良いプレス工場と契約できていないみたいだ。どうしよう、もう一枚買おうかな。
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