ウィリアム・フォン・ヒッペル『われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか:進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略』 濱野大道訳, ハーパーコリンズ・ ジャパン, 2019.
進化心理学のかなり優しい一般向け書籍。著者は米国出身でオーストラリア在住の心理学者で、ロバート・トリヴァースとの共同研究がある。原書はSocial leap : the new evolutionary science of who we are, where we come from, and what makes us happy (Harperwave, 2018.)である。
全体は三部構成となっている。第一部では、人類の現在の姿や心理的傾向がどう形成されたのかをサバンナ仮説に従って説明している。ここにあまり目新しい話はない。第二部では、人類の社会性に焦点を充てた議論がなされている。人類にとっての「環境」とは自然環境ではなく集団内の人々であり人間関係である、というスタンスから、自制心や自信過剰傾向、技術のまたは社会制度のイノベーション、道徳性、暴力と安全について考察されている。目から鱗というほどではないものの、著者本人が行った心理学実験などが紹介されていて、ここはそこそこ面白い。第三部は幸福感をめぐる議論で、本の最後に幸せに生きるためのアドバイスもある。そこそこ幸福感があったほうがいいけれども、幸福感が高すぎる人の所得は低いとのこと。
以上。個々のトピックは興味深い(例えば「米国では出会い系サイトで出会って結婚したほうが離婚しない」など)ものの、そういうのが進化心理学の説明だけで十分だとは思えない。まあ、著者は学者でありものすごい大風呂敷を広げているというわけでもないのだが。別の本を読んですでに知ってたという話も多くある。その説明に限界があることに留意しつつ気楽に楽しむべき内容だろう。
進化心理学のかなり優しい一般向け書籍。著者は米国出身でオーストラリア在住の心理学者で、ロバート・トリヴァースとの共同研究がある。原書はSocial leap : the new evolutionary science of who we are, where we come from, and what makes us happy (Harperwave, 2018.)である。
全体は三部構成となっている。第一部では、人類の現在の姿や心理的傾向がどう形成されたのかをサバンナ仮説に従って説明している。ここにあまり目新しい話はない。第二部では、人類の社会性に焦点を充てた議論がなされている。人類にとっての「環境」とは自然環境ではなく集団内の人々であり人間関係である、というスタンスから、自制心や自信過剰傾向、技術のまたは社会制度のイノベーション、道徳性、暴力と安全について考察されている。目から鱗というほどではないものの、著者本人が行った心理学実験などが紹介されていて、ここはそこそこ面白い。第三部は幸福感をめぐる議論で、本の最後に幸せに生きるためのアドバイスもある。そこそこ幸福感があったほうがいいけれども、幸福感が高すぎる人の所得は低いとのこと。
以上。個々のトピックは興味深い(例えば「米国では出会い系サイトで出会って結婚したほうが離婚しない」など)ものの、そういうのが進化心理学の説明だけで十分だとは思えない。まあ、著者は学者でありものすごい大風呂敷を広げているというわけでもないのだが。別の本を読んですでに知ってたという話も多くある。その説明に限界があることに留意しつつ気楽に楽しむべき内容だろう。