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メセニー作品を湿度高めに演奏するヨーロッパ的解釈

2012-08-22 08:04:39 | 音盤ノート
Pat Metheny & Anna Maria Jopek "Upojenie" Nonesuch, 2008.

  一応ジャズということになるが、女性ボーカルによるAORといったほうが正確だろう。アナ・マリア・ヨペクはポーランドの歌手で、細く透き通った声質を持つ。『ツイン・ピークス』の歌姫ジュリー・クルーズを少しだけ情熱的にした感じ、といっても分かる人は少ないかもしれない。曲によっては、Cocteau Twinsのエリザベス・フレイザーのようになるのだが…、あまりマイナーな例を挙げるのはもう止そう。

  パット・メセニーが全曲で参加し、アコギ、エレクトリックギター、ギターシンセなどさまざま演奏を聴かせる。収録17曲うち8曲が彼の曲。まさに彼に捧げられた作品なのだが、メセニー的な音楽と印象はだいぶ異なっている。メセニーの音楽にある乾いた叙情感と爽快感はばっさり切り捨てられ、湿度の高い叙情と地上から飛翔してゆくような荘厳さがこのアルバムの特徴的な要素となっている。また、控えめにエレクトロニクスやループ音を絡ませるバンド演奏も、非常にヨーロッパの現代ジャズ風である。以上のようなわけでメセニーの曲をよく知っている者にはその欧風なアレンジがとても面白い作品だろう。御大のギターも手抜き無しである。

  2008年のこのリイシュー盤はメセニーとヨペクの共作であるかのような表示となっている。だが、もともとの2003年のオリジナルはヨペクのリーダー作であり、メセニーはゲストという立場だった。アメリカ発売にあたって、Nonesuchが知名度を鑑みてリーダー名を操作したようだ。ちなみに、オリジナル盤は14曲で、リイシュー盤にはそれに3曲プラスされている。
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