先日、Amazonで何気なくクラシックやジャズのCD/DVDを検索していたら、ふと目に止まったのがこのカルロス・クライバー指揮/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団のベートーヴェン「4番」「7番」のDVDでした。同じ組み合わせのソフトは今や風前の灯火である(? いや、実質的には既に火が消えている)レーザーディスク(LD)で所有しているのですが、LDソフトは引っ越しの際に箱に詰めたまま何年もクローゼットの奥深くに眠ったままで、ハードも一応AVラックには収まっているものの、これまた何年も電源すらオンしていませんでした。
LDのハードは壊れたらもう販売していないので、いずれソフトをDVDへダビングをしなければと思いつつも、自分でやるのは面倒くさく、ジャケットや解説も欲しかったので、今回、パッとDVDを購入してしまいました(DVDそのものは数年前から販売されていたようです)。
かつての感動の記憶を思い起こしながら再生してみると・・・メロディラインが美しい「4番」もなかなか素晴らしかったのですが、やはりなじみのある「7番」が圧倒的&感動的な名演でした。「7番」は同じクライバー指揮でもウィーン・フィルとのCDを持っていますが(こちらも名盤と言われています)、コンセルトヘボウとのDVDはCD以上のとてつもなく速いテンポに唖然。
なお、カルロス・クライバーその人についてはWikipediaの記事をご覧ください。
2004年に亡くなったクライバーには生前から熱狂的なファンが数多くいて、その華麗な指揮ぶりには定評がありましたが、DVDでそれを再認識しました。もちろん、プチ・クラシックファン程度の私はその実演を見聞きしたことはありません。テレビ映像などでもリアルタイムで見たのは1992年のウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートだけでしょうか。こちらもLDを持っています。
「7番」の映像を見ると、華麗・流麗にして躍動感にあふれ、右手で軽く握ったタクトがしなやかに揺れて素晴らしい音楽が紡ぎ出される、その魔術のような指揮ぶりが圧巻でした。クライバーはときには激しく身振りも大きく、ときにはオケにまかせて自らは音楽を楽しむような感じで佇むなど変幻自在。指揮棒(腕)の振り方もオーソドックスな指揮法に合っているのか、感覚的に振っているのかよく分からない面もありますが、実に魅惑的な指揮ぶりで、オケと聴衆を惹きつけるのは間違いなし。よく見ると結構細かいテンポ・リズムの(揺れの)指示や楽器へのキュー出しなども行っているようでした。そして、終始にこやかな表情で自分でタン、タン、タン、タン、タンタカタッターといったように音を口ずさんでいたのも印象的でした。素晴らしいオケと音楽を作り上げる喜びに満ちあふれていたのでしょうね。オケメンバーは、とてつもなく速いテンポに食らいついていくのに必死のようでしたが。でも、クライバーにあの表情、あのタクトで音出しを指示されたらゾクゾクっとしたでしょうね。
指揮者によってオケや音楽は変わるとはよく言われますが、このDVDでは、指揮者とオケが音楽を共に作り上げていく喜びに満ちあふれ、また、指揮者とオケが互いに互いを高め合ってこのような熱演になったような気がしました。”重厚長大な大伽藍のような”とも評された朝比奈隆さんとはある意味で対極的な指揮者であり、私が実演で見た日本人指揮者の中では小林研一郎さんとそのレパートリーの絞り込み方も含めて共通点があるのかなと思いました。得意な曲やテンポなどは全然違うとは思いますけれど。
このDVDはクライバーの指揮ぶりを見るもので、通常のコンサートの映像、オケの映像としては物足りないと思いますが、今は亡きクライバーの生気にあふれる指揮ぶりを見ることができる超貴重なものだと思います。私にとってもお宝ですね。
Amazonにも熱烈なカスタマー・レビューが多数ありますので、そちらもご覧ください。