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暗殺の年輪(藤沢周平)

2006-05-29 22:00:00 | 15:は行の作家

暗殺の年輪(文藝春秋)
★★★★’:75点

藤沢周平の作品では初期の短編集。3編目の「ただ一撃」はその素晴らしさに唸ったのだが、トータルでは上記のような採点とした。風景描写や情景描写、男女の機微の描き方は藤沢周平ならではの味わい。既にこの頃から凄い力量だったことを改めて知った。
***************** Amazonより *****************

(出版社/著者からの内容紹介)
藩の権力争いの陰で、末端の平侍を翻弄する苛酷な宿命。武家の非情な掟の世界を、端正緻密な文体で描いて久々の本格時代小説の登場と評された世評高い直木賞作品

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○   黒い繩(なわ)
○’ 暗殺の年輪   ----第69回直木賞受賞作
◎  ただ一撃
△  溟(くら)い海 ----第38回オール讀物新人賞受賞作
○  囮

直木賞受賞作の「暗殺の年輪」は良かったのだが、お家騒動ものでは後年の傑作群に比べるとやや落ちるかな?といった印象だった。

「ただ一撃」は短編としてはベスト5級の素晴らしさ。舅(刈谷範兵衛)と嫁(三緒)の関係が絶妙。範兵衛のだらしないところを明るくたしなめたりする嫁。このままユーモラスな展開が続くのかなと思っていたら・・・。後半、かつて仕官のきっかけとなった剣の腕をみこまれ、難敵との試合の切り札として抜擢される範兵衛。すっかり鈍ってしまった野生を取り戻すべく山に入り、天狗が出たとも噂される。試合の前日、狼のごとき眼の光を宿して戻ってくる範兵衛だが、ある悲劇をも生んでしまう。ラストの8ページが予想だにしなかった展開で胸をうたれた。傑作である。

「溟(くら)い海」は絵師・葛飾北斎が主役。藤沢がこのような題材を取り上げていたとは知らなかった。ちょっと意外な感じ。あまり藤沢節を感じずピンとこなかったのだが、他人に決して見せるはずのない広重の暗い表情と、それを見てしまった北斎が印象的。

「黒い繩」と「囮」は似た味わいを持つ。罪を犯した男、その男を追う別の男、それにまつわる女のいじらしさと悲しさが鋭く描かれた秀作。「黒い繩(なわ)」はラストの一行が秀逸。


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