ひろの東本西走!?

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ゴローのヒマラヤ回想録(岩坪五郎)

2009-02-07 22:10:37 | 本と雑誌

Goro1 ゴローのヒマラヤ回想録(ナカニシ出版)
★★★☆:70点

久々に山岳関係の本を読んで、とても面白かったです。京都大学、ことに山岳会にまつわる人々のなんと人間味にあふれて魅力的なこと!けったいな・・・、いや、ユニークでおおらかな人々がいかに多かったことか。

今西錦司・桑原武雄・梅棹忠夫・四手井鋼彦といった巨人たちも人間臭くて良かったです。岩坪の指導教官たちも人としての器が大きかったみたいですね。今西錦司が言ったという「頑張って登山・探検を続けろ。役人や会社員にはなるな。月給は安いが、大学に残れ。ここはいちばんそれがやりやすい。もちろんお前たち全員がそうするとは思っていない。歩留まり三分やと思うとる」も面白かったです。そして、リーダーの条件、「①人望 ②使命感 ③洞察力 順序もこの通り。これはサルの群れでも同じや」という今西錦司の言葉には満点大笑い!

京大には東大によくいるような良い子タイプ、如才のないスマートな秀才は少なく、どエライ奴から箸にも棒にもかからない落ちこぼれまでいるという”標準偏差:大”説に、なるほど、そうかもしれへんなあと思いました。ただ、京大に入れた落ちこぼれも世間水準では凄いと思いますけれど。昔はそうでもなかったのかな?京都人の反体制的な姿勢(野党的精神)、反骨精神も面白く、大学紛争の際に著者が逮捕された話などもgood!

ヒマラヤ回想録なので、もちろん登山についての記述が多数あって興味深かったのですが、全体としてはやはり個性的な人が出てくる章が抜群に面白かったです。また、関西弁の味わいもとても良く、私の大学~20歳代前半という青春時代のバイブル「なんで山登るねん」(高田直樹)とも共通性がありました。

本書では色々な所で話された、書かれたものの収録が多かったのですが、もっと書き下ろしの文章を読みたかったです。岩坪夫人の書かれた文章もユーモア感があってとても良く、文章のうまさは夫以上かと思いました。ご自身の学術研究的な内容が書かれたV章は、ちょっと異質な感じもあり、あまり理解できませんでしたね。元・大学教授の立場としてこれらの内容も含められたとは思いますが、他の章のように、山や登山の様子を描きながら、その中に考え方を含めるスタイルで十分だったのではないでしょうか?

ヒマラヤ登山のキャンプで、毎晩、桑原武雄の話を聞いたが、それはあたかも無料の「文化講演会」だったという話も良いですね。山での友情や昔の学生と教師の関係などは、旧制高校の野球部を描いた映画「北辰斜にさすところ」と似ているとも感じました。古き良き時代の物語、人々の心にまだ余裕があった時代なんでしょうかね?今では恩師という言葉もあまり使わないのかなあ。。。

内容(「BOOK」データベースより)
京都大学に入学した日にふと山岳部に入って、ヒマラヤ初登頂を夢み、今西錦司、桑原武夫、梅棹忠夫ら「悪い」先輩に乗せられて、つい大学に居残ることとなり、気がつけば京都学(岳)派のリーダーに…。