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ひろの東本西走!?

読書、音楽、映画、建築、まち歩き、ランニング、山歩き、サッカー、グルメ? など好きなことがいっぱい!

未来(あした)のおもいで(梶尾真治)

2007-01-20 22:20:00 | 11:か行の作家

Miraino1 未来(あした)のおもいで(光文社新書)
★★★★:80(~85)点

山(熊本県・白鳥山)という舞台が良かったです。山には世俗とは別の空気があり、別の時間が流れている感じがよく分かります。

滝水浩一と藤枝沙穂流。27年という時間の壁を超えた2人の出会いと愛。互いの想いを伝えるには、石灰岩でできた洞に置かれた箱の中の手紙しかない。

******************** Amazonより ********************
内容(「BOOK」データベースより)

熊本県・白鳥山。洞の中へ雨宿りに入った滝水浩一の前に現れた、美しい女性・沙穂流。ほんの束の間の心ときめく出会い、頭を離れないおもかげ…。滝水は、彼女が置き忘れた手帖を手がかりに訪ねてゆく。そこで、彼女と自分が異なる時代を生きていることを知るのだった―。時空を超えて出会った男女の愛をリリカルに描く、心に泌みる書下ろし長編ファンタジー。

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【注:以下、ネタバレあり】

27年前のデザイン大賞作品に自分が描かれていることを知った沙穂流。
「どうしたの。泣いているじゃないか、サーホ」
沙穂流は気がつかなかった。涙が溢れ出て頬をとめどなく伝わっていることに。
(私は愛されている・・・。想いは通じていた!----ひろ注)

そして、浩一は沙穂流の両親の、沙穂流は浩一の命を救おうと全力を尽くす。自分が行方不明になるとされた12月30日。浩一は沙穂流から白鳥山には登らないようにと釘を刺されていた。忠告通り待っていればまた沙穂流と会える日が来るのか。そして、浩一がとった行動は・・・。
♪必ず、最後に愛は・・・♪

この本は、「つばき、時跳び」のコメントでミナミさんからお奨め頂いた作品です。ヒロインの沙穂流は誰もが好きになるタイプの女性で、カジシン作品に出てくる女性は描き方が類型的と言えなくもないかな・・・。でも、いい娘(こ)なんですよねー。

梶尾真治はタイムトラベル・タイムスリップの理論的なこと、科学的なことにはあまりこだわらないタイプのようです(少なくとも表現上は)。もう少しボリュームがあったり、エピソードを増やしても良かったと思いますが、胸キュンの短編がカジシンの持ち味なのかもしれません。まだまだ読むぞー。

P.S.コーヒーは貴重ですね。

◎参考ブログ:ユキノさんのブログ”時間旅行~タイムトラベル”
         ケントさんのブログ”ケントのたそがれ劇場”
         ゆうきさんのブログ”本を読んだら”


つばき、時跳び(梶尾真治)

2007-01-07 11:17:36 | 11:か行の作家

Tsubakitoki1 つばき、時跳び(平凡社)
★★★★☆’:85点(~90点)

今年の読み初めは、以前、「クロノス・ジョウンターの伝説」で感想を書いた梶尾真治のタイムトラベル・ロマンス「つばき、時跳び」です。夢とロマンと愛情にあふれた作品で、新春にふさわしい作品だったと思います。ヒロイン”つばき”は若くて美しく、聡明だけれどやさしい素晴らしい女性です。江戸時代に生きる彼女と現代に生きる主人公・井納惇の「時空の壁」を超える恋物語に梶尾真治ワールドの魅力を堪能しました。

【注意:以下、多少のネタバレあり】

つばきと惇はお互いの時代にとどまることは出来ないのか?
”りょじんさん”とは、いつの時代の誰なのか?
つばきが惇に送ったメッセージとは?
150年経っても変わらなかったものは?

ヒロインの”つばき”と、物語の舞台となる邸宅・百椿庵の庭に咲く”椿(つばき)”が色彩を感じさせて見事。
熊本藩の家老・長岡監物は頭が切れるだけでなく、惇が語る未来のこと・考え(人は皆、平等、国を司る者は皆で選ぶ など)も素直に理解する度量の大きな人物だっただけに、彼のことなどをもう少し深く描いてほしかったですね。

全体的に、もう少し長くてドラマチック&スケールが大きくても良かったかなという気もしますが、タイムトラベル・ロマンスらしい、純愛をベースにしたシンプルで心優しい物語が梶尾真治の魅力・特質なのかもしれません。
また、こむずかしい理論をふりかざしたりしない親しみやすいタイムトラベルSFは誰でもが楽しめるでしょうね。

************** Amazonより **************

幽霊伝説のある旧家に住むことになった「私」は、ある日、突然出現した不思議な少女に魅せられる。150年の「時の壁」を超える恋の行方は?あの『黄泉がえり』の作者が満を持して放つ究極のタイムトラベル・ロマンス。

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◎参考ブログ:

 ミナミさんの”日々是好日”
 nanayoさんの”fine days”
 とっとっとさんの”日記みたいなもの”
 悠樹さんの”読書と日々の日記”


天山を越えて(胡桃沢耕史)

2006-06-17 22:15:00 | 11:か行の作家

Tenzan1 天山を越えて(徳間文庫)
★★★★:80点
(但し、ブックカバー写真は双葉文庫)

中国の奥深くを舞台にした久々の冒険小説ですが、面白かったです。胡桃沢氏の小説は初めて。あまり深みとかはないのですが、その分、明るく軽やかで、異境を舞台に繰り広げられるユニークな冒険物語となっていました。もう少し書き込んで、深み、陰影、味わいを出してもらってもいいかなとも思ったのですが、明るさや軽やかさ、ユーモア感が著者の持ち味なのかもしれません。

********* Amazonより(内容(「BOOK」データベースより) *********

昭和8年、満洲をほぼ掌握した日本軍部は、来るべき全面戦争に備えてタクラマカン砂漠に住む自由の民東干との提携を策した。奉天鉄道ホテル社長の娘・犬山由利に目をつけた軍部は、東干を率いる青年・馬仲英との縁組みを強引に承知させる。だが、仲英は天山地方へ転戦。取り残された由利は、従者の衛藤良丸上等兵とともに仲英の後を追うが…。推理作家協会賞を受賞した著者会心の冒険ロマン。

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北上次郎氏の解説が本作品の魅力をほぼ余すところなく伝えています。

  「主人公の数奇な運命をめぐって波瀾万丈、奇想天外、まったく人を喰った
      物語で、もう何と言ったらいいのか、読み始めたらとまらない稀代のストーリー
      テラー胡桃沢耕史の面目躍如なのである。

      ・・・しかし、本書は他の作家が考え得ないホラ話すれすれの奇想天外な
      物語であり、その独創性の面では高く評価しなければならないだろう」

御大・北上氏の文章に付け加えるべき言葉は殆どありません。確かにまあ、よくぞこんなストーリーを思いついたものです。そうそう、読んでいる最中、ふと浅田次郎氏のことを思い出しました。”波瀾万丈、奇想天外”といったところが、「蒼穹の昴」と似ていたのかな?

アーサー・カマルが表向きの武器提供の仕事だけでなく実は帯びていた密命とは?それが第二次世界大戦に及ぼした影響は?いつも髭をきれいに剃っているセルディ・アブドラの正体は?アメリカにとっての極秘文書が、先に日本語訳とロシア語訳で出版されていた理由は? などなど、様々な謎もてんこ盛りで楽しさも一杯でした。

国家のために数奇な運命を享受するしかなかった由利の悲しくも力強い生き様。命がけの不思議な旅をともにした由利と衛藤衛藤(もりふじ)が、数十年後に再度出かけた旅の意味が胸をうちます。

昔からシルクロードが好きだったので、ウルムチ・トルファン・カシュガルといった地名にも何かしら懐かしいものを感じました。ヨーロッパの美しい街並みも良いけれど、シルクロードにも行きたい!


クロノス・ジョウンターの伝説(梶尾真治)

2005-12-06 23:58:48 | 11:か行の作家

kuronosu-1クロノス・ジョウンターの伝説(ソノラマ文庫)
★★★★☆:90点

図書館で急きょ借りた本ですが、良かった~♪

タイムトラベルもの(解説では「時間SF」となっていました)は好きで、これまでにも何冊か読んでいるのですが、またまた感動してしまいました。ハードSFファンには理論的な部分が物足りないかもしれないし、ラブストーリーの要素がかなり強くて「甘い」といわれるかもしれませんが、こういうお話には弱いのです。誰しも、あのときこうすれば良かったとか、もう一度あの時代に戻れたら・・・とかを考えたりすることがあると思いますが、人生も半ばを過ぎると、そういう思いが強くなるんですよね。

収録の3編はそれぞれ異なった味わいがありました。
ふたりが迎えるのは、幸せなゴールか悲しい結末か(文庫本裏カバーより)。
3編の甲乙つけがたしですが、悲しい結末となる1編は、愛の代償のあまりの大きさに泣けます。カエルよカエル。
エンジニアの青年、花屋の女の子、建築好きの青年、イラストレータの女の子、SF(?)作家になった青年、医者になった女の子。みんな良かったです。サブキャラも良し。

切なさ系のファンタジーSFとも言えます。
愛の力は凄い。愛する人を救うために、愛する人のもとへいくために、信じられないほどの行動力が出ます。時の壁も愛さえあれば・・・。

乙女チックと言われようが、構いません。断固、支持。
梶尾真治は映画「黄泉がえり」を見て感動しましたが、ちょっと作品を追いかけてみようかな?

~Amazon 内容(「BOOK」データベースより)~

  ただし、「増補版のもの」 
  ※読んだのは1999年発行の文庫本初版

  もしも過去に跳べることができたら、今は亡き、愛する人を救いにいける。
  すでに滅びた物を目の当たりにできる。それだけでなく、過去の世界で、
  新たな恋に落ちるかもしれない。ついに「クロノス・ジョウンター」という
  機械が開発され、誰もが夢見るそれが現実となったとき、そこにさまざまな
  物語が生まれた。さあ、「時」と「おもいで」の一流シェフの腕前をじっくりと
  ご堪能を。

  内容(「MARC」データベースより)
  至上の愛が時の壁を越えたとき、ふたりが迎えるのは、幸せなゴールか
  悲しい結末か。ここに、二通りの実験結果をご報告する。時を超えた愛と、
  涙とスリルとともに描く、タイムラグ・ラブストーリー。