11月も中旬となり、まさにスポーツの秋、読書の秋、芸術の秋たけなわですね。
先日、ザ・シンフォニーホールで開かれたチェコ国立ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートに行ってきました。外国オーケストラのコンサートに行ったのは何年ぶりでしょうか。
10年ぶり? いや、15年ぶりか? ひょっとすると、それ以上の久方ぶりかもです。
実はザ・シンフォニーホールで聴いた初めてのコンサートが約20年前?のブルノ・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートでした。
一昨年3月に妻とプラハ・ウィーン旅行に行き、そのとき訪れたのはプラハだけではありましたが(プラハからウィーンへ列車で移動した際、途中でブルノの街も通過はしました)、歴史ある美しい国・チェコには親近感がありますし、ブルノ・フィルという名前を目にしてとても懐かしい気持ちになって今回のチケットを購入しました。
今回の大阪でのプログラムは、
①スメタナ 交響詩「モルダウ」
②ドヴォルザーク 交響曲第8番
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③ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」
という、チェコのオケらしい民族色にあふれたものです。
指揮はレオシュ・スワロフスキー氏。この方の名前は初めて聞きました。
ちなみに、大昔に聴いたときのプログラムは、ペトル・ヴロンスキー指揮で
①スメタナ 「モルダウ」
②メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲
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③ドヴォルザーク 「新世界より」
でした。②が違うだけですね。
さて、20年ぶりに聴くブルノ・フィルの「新世界より」は如何に!?
そして・・・この日の演奏は期待通りの素晴らしいものでした。ダイナミックレンジが大きく、緩急の差も大で完全に私好みの演奏ぶり。お国ものということもあるのでしょうが、熱のこもった、それでいて情感と哀感が満ち満ちた演奏が感動的でした。ブルノ・フィル、凄い!
「モルダウ」は冒頭のフルートの音色が実に美しく、全体には、緩-急-緩のテンポが絶妙でした。1曲目から堂々の演奏です。
交響曲第8番・第9番は元々大好きな曲ですし、両曲&全楽章とも素晴らしかったのですが、あえて特に印象に残った楽章を挙げると、第8番では第2楽章(こんなに素敵な楽章でしたっけ?予想以上に良かったです!)と第3楽章(明るさと哀愁が入り混じった艶やかな弦)、第9番では第2楽章でしょうか。後者では今回、「家路」の別名で有名なイングリッシュ・ホルンの旋律よりも、その後の中間部(弦のさざ波に支えられた木管の寂寥感をたたえた旋律、コントラ・バスのピチカートに乗って奏でられるクラリネットの旋律・・・by宇野功芳)がとても印象的でした。ああ、いいなあ・・・とため息です。最後の弦のトップ8人→コンマス&チェロの二重奏のひそやかさも見事でした。
楽器演奏などの経験が全くない素人クラシックファンの私ですが、①~③ともメロディは頭に入っており、好きな個所もはっきりしているため、そこに近づいてメンバーが準備の態勢に入るとドキドキして「来い、来い、来い、来てくれよ・・・」と期待し(下品な表現ですみません)、思い通りの音が来ると、「来たーっ!」と心の中で叫んだり、逆に、「おー、ここでこういう表現をするのか、こんなテンポにするのか」と驚いたり、実にミーハーな楽しみ方をさせて頂きました。
全体では、定評のある弦の美しさはもちろんのこと、フルートとクラリネット、終始安定して朗々とした響きを聴かせてくれたホルン、ここぞというときの華やかなトランペット、ティンパニの強打も見事でした。
「新世界より」は、イシュトヴァン・ケルテス指揮のウィーン・フィルハーモニー盤('61)という超名盤があり、どうしてもこのCDと比較して不満を覚えることも多いのですが、今回の演奏はケルテス盤と似たような印象を持ちました。その意味でも大満足です(ただし、帰宅後にCDを聴いてみると、ケルテス盤の方が緩急の差は更に大きかったようです。うーん、やっぱり凄い)。
コンサートでは、管弦楽曲-協奏曲-交響曲というプログラムが割と多いのですが、協奏曲はどうしてもオケの編成を小さくしたり、音もやや控えめになってそれが物足りなく感じることも多く、派手好みの私としてはこの日のプログラムは最高でした。また、この日のコンサートは、プログラム・演奏・指揮ぶり・ファンサービス(開演前にホワイエでミニ・コンサートあり)など全てが素晴らしく、総合感銘度でこれまででベスト級の1つだと感じました。ただ、満員じゃなかったんですよねえ。8割くらいの入りだったでしょうか。それだけが残念でした。もちろん、この日のお客さんの多くは大感動だったと思うのですけれど。
アンコールはスラブ舞曲 第15番(作品72-7)。実は、終演後のホワイエに本日のアンコール曲として確かスラブ舞曲 第7番と書いてあったと思うのですが、これは作品72-7の7番と勘違いされたのですかねえ。
実はこのアンコールの演奏も凄かったです。ある意味、一番凄かったとも言えます。全体的に速いテンポで、コーダはまさに超特急。弦のめまぐるしい腕の動きは視覚的にももの凄く、超絶的演奏でした。ホール内を興奮の渦に巻き込んだ演奏が終わり、弾かれたように沸き起こった大拍手・大喝采が感動的でした。これぞ実演の醍醐味ですね。CDなどでは絶対に味わえない生の迫力と魅力を堪能しました。オケ・メンバーも聴衆の興奮ぶりを嬉しく感じてくれたんじゃないでしょうか。
終演後、この日の指揮者のレオシュ・スワロフスキー氏にサインを貰おうと、ホール裏手の楽屋口に回って待つこと約20分(20人くらいの人が列を作っていました)。オケメンバーが次々と着替えてホールを後にした最後にスワロフスキー氏が登場。プログラムにサインを頂いたのですが、実ににこやか&気さくな方で、片言の英語で素晴らしいひとときをありがとうございましたと言ったら、チェコ語で(?)モニョモニョと言われた後、”My pleasure(光栄ですorどういたしまして)”と言ってくださいました。
今回の席はA席(2F BB-18)9000円でしたが、その価値は十分ありましたね。
またこのような感動を求めてコンサートに行きたいものです。
◎参考ブログ:
結月秋絵さんの”Allegro con brio”